フランス人のパパと日本人のママの離婚、そしてママが自分を連れて日本へ引っ越すという話を聞き、それを阻止しようとするユキとその親友ニナ。大人の事情を理解しつつも、素直に受け入れることができないふたりの少女が“愛の妖精”からの手紙を送ったり家出をするなどして、小さな反抗をする。ママが出て行った晩、踊り狂うパパがユキにつぶやく。「大人なんてヘンな生き物だ」と。そして家出の後に迷い込んだ深い森を抜け、別世界へたどり着くユキ。そこで彼女に変化が訪れる。
最後、日本で新しく始まるユキとママの生活での、ネットを使ってニナと交流する様子がとても自然で、彼女の笑顔から日本での生活を楽しんでいるのだということがわかる。誰もが子供時代に一度は感じた、家族を巡る切ないエピソード。ユキは多くを語らないが、複雑な想いを胸に秘めた少女の気持ちを想像すると胸がきゅんとなる。そんな主人公ユキを、映画初主演となるサンピ・ノエが自然体で演じている。
『H Story』で『ベティ・ブルー 愛と激情の日々』のベアトリス・ダルを、オムニバス映画『パリ・ジュテーム』の一篇「ヴィクトワール広場」ではジュリエット・ビノシュなどフランスの大女優たちから見事な演技を引き出し、ヨーロッパで圧倒的な評価を受けている諏訪敦彦監督。そして、ジャン=リュック・ゴダール、アルノー・デプレシャンなど世界の巨匠の作品で活躍を続けているフランスの名優イポジット・ジラルド。そのふたりが、“子供の高さ”でどのように世界を理解するかということを出発点に物語を作り上げた。
撮影は、諏訪監督がこれまでの映画で行ってきたように、脚本の台詞部分は空白にし役者の即興で作るという方法で、そして演出はイポリット監督の役者として培ってきた感性で、そして編集は日本とフランスで時間をかけ何度もやりとりをしながら行われた。国籍やバッググランドが異なるふたりが日々意見を交わし丁寧に作り上げられた作品だ。
『ユキとニナ』
2010年1月23日(土)より、恵比寿ガーデンシネマ他 全国順次ロードショー
監督・脚本:諏訪敦彦、イポリット・ジラルド
出演:ノエ・サンピ、アリエル・ムーテル、ツユ、イポリット・ジラルド
2009年/フランス・日本/93分
配給・宣伝:ピターズ・エンド
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