(C)Yellow Bird Millennium Rights AB, Nordisk Film, Sveriges
既に日本でも『このミステリーがすごい!』2010年海外編で2位に輝くなど原作が絶賛を呼び、鳴り物入りでの映画化がヨーロッパを中心に大ヒットというニュースも舞い込むなか、待望の公開となる『ミレニアム ドラゴンタトゥーの女』。スウェーデンにある孤島を舞台にした少女失踪にまつわる密室劇を中心に、その事件に端を発する血族の歴史が曝かれる大河ドラマ的要素を持つストーリーの骨格。そこに姿の見えない犯人を追い詰めていこうとするシリアルキラー/サイコサスペンスの風味と、事件の謎を探る主人公となる雑誌ミレニアムの編集者ミカエルと女性天才ハッカー・リスベットとの友情関係など、ミステリーの持つ醍醐味がたっぷりと盛り込まれている。数多くの登場人物とトピックを2時間半で見事にまとめあげた脚本と監督ニールス・アルデン・オプレヴの手腕は確かなもの。北欧の持つブライトなイメージとは正反対の猟奇的な描写や性的虐待といったいくぶんダークでショッキングな描写を随所に盛り込みながら、奇妙に入り組んだ謎と人物像が次第に解き明かされていくサスペンスドラマとしての見応えは十分。
(C)Yellow Bird Millennium Rights AB, Nordisk Film, Sveriges
またタイトルロールである風変わりなハッカー・リスペットを演じたノオミ・ラパスの魅力も、今作の成功に大きな役割を果たしている。スキニーな肢体、ピアスとタトゥーだらけのパンクないでたちで、社会から逸脱した人物しながらもそのスキルを買われ事件の裏を暗躍する仕事人を続ける。ラパスは影を帯びたキャラクターとインパクトのあるルックスとともにその奥にあるナイーヴさをも表現している。彼女と共謀するミカエル役を演じたマイケル・ニクヴィストも大企業を告発する自らの記事が原因でその職を追われた雑誌発行人という、人間臭さとインテリジェンスを両立させるキャラクターにふさわしい。個性的なキャラクターがめまぐるしく動き回り、ラストまで途切れぬ緊迫感を持つ物語に、まさしく一時も目が離せない。ミステリーファンの期待に応える重厚感に溢れた仕上りとなっている。
『ミレニアム ドラゴンタトゥーの女』
2010年1月16日(土)、シネマライズ他全国順次ロードショー
監督:ニールス・アルデン・オプレヴ
出演:ノオミ・ラパス ミカエル・ニクヴィスト スヴェン・バーティル・トープ ステファン・サウク他
原作:ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女(早川書房)
配給:ギャガ
宣伝:ギャガ×Lem
2009年/スウェーデン映画/カラー/シネスコ/153分/ドルビーデジタル
公式サイト