骰子の眼

cinema

東京都 新宿区

2009-11-14 10:00


あなたは映画作家・ルドルフ・トーメを知っているか?貴重な上映会開催

映画評論家・赤坂大輔氏による上映とレクチャーのシリーズがアップリンク・ファクトリーで始動。
あなたは映画作家・ルドルフ・トーメを知っているか?貴重な上映会開催
『島の探求』より
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現代映画とメディアとの関連を独自の批評眼で考察し続ける映画評論家・赤坂大輔氏が、映画の新たな可能性について探るイベント・シリーズ‘New Frontier New Cinema’が開催される。2009年11月17日(火)渋谷アップリンク・ファクトリーで開催される第一回は、ドイツの映画作家ルドルフ・トーメ『島の探求』を上映する。トーメはニュージャーマン・シネマの初期にストローブ=ユイレと最も近い関係にあったとして語られる映画作家だが、日本ではその名前や作品が紹介されることは極めて少なかった。

「トーメ監督本人の協力もあって、ムルナウ/フラハティの『タブウ』への憧憬から南太平洋ウレパラパラ島で撮った3時間を超える大作『島の探求』Beschreibung Einer Insel(1977/8)を紹介する機会を得られたのは嬉しい。残念ながら諸事情からオリジナルの16mmではなくDVDではあるのだが、ほぼ1年1作のペースで今も健在なのに、ニュージャーマン・シネマの中で一番B級映画的センスの持ち主だからか、日本では口に上るのが稀な映画作家になってしまったトーメの作品のうちでも最もレアな映画であり、製作後30年余にして最初で最後の日本上映となる可能性は高いと思われるのでぜひお見逃しなく!と言いたい。一応フィクションとしての枠はあり、島の生活習慣や言語を探求するヨーロッパ各国から成る男女のホークス的な?学者チームと現地の人々の交流を描くというものだが、ただひたすら日常生活とディスカッションが描かれるうちに、トーメの繊細この上ない被写体としての物質や人々への配慮が横溢しているのが感じられる。同じ物質への配慮という点でビトムスキーの『塵』との比較も興味深いところだろう。どちらもストローブ=ユイレの弟子筋にあたるところから納得できるところだが(ストローブを感動させたというトーメの初期短編『ステラ』やダニエル・ユイレ編集の『ジェーンはジョンを撃つ、彼がアンと関係を持ったから』など何とか見てみたい)、トーメの方は厳格であるよりはセンシュアルで、例えば下記シーンのマスターショットからクローズアップに近づき離れる構成をたどたどしい英語で語られる情報以上に沈黙から語りへの瞬間をとらえるための連続性への配慮と距離感と編集はすばらしいの一語である。」
(以上、『New Century New Cinema』の赤坂大輔氏のテキスト「ジャームッシュ、マッケンドリックそしてトーメ『島の探求』」より引用)

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『島の探求』より

赤坂氏はこれまでもアテネ・フランセ文化センターで「ポルトガル映画講座」をプロデュースし、ペドロ・コスタ、ジョアン=セザール・モンテイロらを紹介。また同じくアテネ・フランセでNew Century New Cinemaシリーズを行うなど独自の活動と論考で知られる。今回上映される『島の探求』は実に3時間10分に及ぶ大作で、今後DVDでも観ることは難しい作品。上映終了後には赤坂氏によるレクチャーも行われるので、この貴重な機会をお見逃しなく。


‘New Frontier New Cinema vo.1’
ルドルフ・トーメ『島の探求』上映会
2009年11月17日(火)18:30開場/19:00上映

会場:渋谷アップリンク・ファクトリー
(東京都渋谷区宇多川町37-18トツネビル1F)[地図を表示]
料金:予約¥1,800/当日¥2,000(予約共に1ドリンク付)
予約方法はこちらをご参照下さい

映画『島の探求』Beschreibung einer Insel
製作/監督/脚本:ルドルフ・トーメ、シンシア・ベアット
撮影:マシュー・フラナガン、セバスチャン・シュローダー
撮影助手:ピーター・シンクレア
録音:マックス・ヘンセル
編集:クラリッサ・アンバック
ミキシング:ディエター・シュワルツ
(16mm/192分)

赤坂大輔 プロフィール

1965年生。1993年より映画批評家として執筆開始。2005年よりシネクラブと批評のウェブサイト『New Century New Cinema』を立ち上げ活動中。2007年より立教大学講師。

公式サイト

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