骰子の眼

cinema

東京都 千代田区

2009-10-28 17:40


観たぞ!『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』全世界同時公開直前レビュー

本日10/28からの期間限定公開に先立ち、キング・オブ・ポップの素顔をいち早く覗いた。
観たぞ!『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』全世界同時公開直前レビュー

マイケル・ジャクソンの最後のコンサートを映画化した『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』が10月28日(水)より丸の内ピカデリーほかにて期間限定公開される。web DICE編集部は28日19時からの世界同時公開に先立ち、13時より丸の内ピカデリーにて開催された先行試写会に参加した。

今年の夏、ロンドンのO2アリーナで開催されるはずだったコンサート “THIS IS IT”。 本作は2009年4月から6月までの時間の流れを追いつつ、100時間以上にも及ぶリハーサルと舞台裏の貴重な映像から構成されている。幻となったロンドン公演の監督を務めていたケニー・オルテガが映画も監督を担当している。

今作から浮かび上がってくるのは、限りなくファンのために尽くした、ひとりの孤独なアーティストの姿だ。バンドのミュージシャンに「月光に浸る感じで」という表現でサウンドを要求するシーンなど、自身の沸き上がってくる想像力をどう伝えたらいいのかというもどかしさが痛いほど伝わってくる。そして何度か「アイ・ガッタ・キュー」(僕がキューを出すよ)と語る一幕があるが、巨大な遊園地のようなエンターテインメントの空間をコントロールしようとするストイックな表情が心に残る。

thisisit_main2

しかし『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』は、彼が決して孤高のカリスマではなく、優しく、ユーモアと思いやりのあるひとりの人間であることもまた伝えている。冒頭、このツアーに参加できることを涙ながらに感謝する若いダンサーたちの姿には、リハーサル、そして舞台裏という限定された空間により生まれたこのツアーのクルーに生まれた親密さを感じることができる。

そしてもちろん圧倒されるのが、ジャクソン5時代も含む、ベストヒット集と言っても過言ではない名曲の数々。しかもあくまでリハーサルの映像であることが解っていることにもかかわらず、そのどれもが極めて完成度が高くそしてエキサイティングであることだ。マイケル自身がバンドのメンバーに、できるだけ原曲に近いアレンジでプレイすることを指示する場面では、決していたずらに作家性を発揮するのではなく、オーディエンスそれぞれが持つその曲への思いをトレースしたうえで、そこに冒険的な要素を加えていっていることが解る。「ヒューマン・ネイチャー」をアカペラで歌い上げるシーンなどに象徴されるように、それぞれの楽曲に対するリスナーの思いを具体化することができることこそ、彼がキング・オブ・ポップの称号を与えられたゆえんなのだということを再確認できるのだ。観終わったあと、私たちはそれぞれのイマジネーションの中で、このマイケル・ジャクソンのコンサートを完成させることができることだろう。

(文:駒井憲嗣)



映画『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』

2009年10月28日(水)より丸の内ピカデリーほか全世界同時公開
監督:ケニー・オルテガ
振り付け:トラビス・ペイン
音楽監督:マイケル・ビアーデン
プロデューサー:ランディ・フィリップス
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公式サイト


レビュー(0)


コメント(1)


  • 工藤麻由美   2009-11-20 14:52

    渋谷を歩く某日、商業ビルの表に置かれた小さなモニターにこの「THIS IS IT」
    の映像が映し出されつい私も行き交う人の後ろから見入っていた。MJとともに多
    くの時代のフェーズが様変わりしたように語る評論家がいる。書店にも様々な関
    係本があっという間に出る。果たして難解な理論で分析されることをマイケルは
    望んでいたのだろうか。少なくとも時代はミュージシャンの孤独な作業の一部を
    数々の映像を通して大衆の前にさらけ出すことに成功したのだ。