お母さんのパーフェクトな笑顔。そして眩しい金歯!
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カシュガルからウルムチ新・旧市街地へ
ウルムチという町は、2年ほど前から住居など建物の取り壊しが始まっている旧市街地と、外国人が泊まるホテルがあるような近代化しつつある新市街地の2種類がある。まずは、旧市街地へ。
旧市街地は、情緒ある町並みが残る古い町。しかし、中国はこのウイグルならではの建物を、取り壊そうとしている。2008年に起きた四川大地震が起き多くの犠牲が出たことを口実に、皆を守るために安全性が保証できない古い建物は壊すしかない、と取り壊しが進んでいる。現在も多くの人々が暮らしており、なくなってしまうのは寂しい。そんな思いを抱える人が多い。
伝統工芸である陶芸、そして旧市街地の取り壊し
絵付けはお母さんの担当。一つ一つ感性に任せてアドリブで筆を動かしてゆくので、同じものは一つたりとも生まれない。
旧市街地で、作陶家を尋ねたモーリー氏一行。ここで出合った陶器は、芸術品ではなく伝統工芸。窯の形、模様、色彩など、日本で作られている陶器に通ずるところが大きい。日本の焼き物文化のルーツなのではないだろうか。早速、お土産に購入。この町の風景は、遠く離れているのに、懐かしさを感じる、そして人々の笑顔。それだけを見ても、ウルムチの旧市街が壊されるというのは、本当に寂しい。「中国政府はいつかやるだろうな思っていたけど、こんなに急速に、一気にやるとは」と嘆くモーリー氏。「しかも後から建てる建物がどうしようもない。壊すことが目的だから。かつて文化大革命のときに漢族の古い伝統的な建物を壊したように、中国が威信を示すためのもの。愚かなことを繰り返しているんだ」とも。それに対して反対の声を上げようものなら、直ちに政治犯として捕まってしまうのが現実だという。
汚職がはびこっているという中国でも、中央部には、少数民族についてきちんと状況を把握している人、話がわかる人がいる。しかし彼らも少数民族に対しては荒っぽい手だてをとる。民族間でうまくやる方法を探ることは中国のためになるはずなのに、ひたすら排除に向かう姿勢は変わらない。
ウイグルでは今でもロバが大切な交通手段であり、街のそこかしこに働くロバの姿を見ることが出来る。
そして一行はロバタクシーに乗車。「動物愛護的に迷ったが、いつなくなってしまうかわからないウイグル文化を伝えたいとの思いで乗った」とモーリー氏。町中では、屋台などでオープンファイアーをよく見かける。皆、火や刃物など危険物の扱いがうまい。大人だけでなく子供が操る様子も見られる。小さい頃からリスクを負う、危険性を知ることを学んでいるかのようだ。子供たちは逞しい。雑踏の中を三輪車で行き交い、遊んでいる。
カシュガル郊外の市場で羊飼いの少年と出会う。接客で忙しい父親に代わって、しっかり羊の世話をしていた。
“マイノリティ”について考える
中国には、少数民族の優遇政策があるのも事実。ひとりっ子政策の対象外であるし、大学入学にも特別枠がある。その状況で一揆などを起こすと「なまけもの」「好きなだけ子供が生めるのに」「感謝を忘れてけしからん」と言われてしまうことがあるようだ。しかしモーリー氏は「少数民族というマイノリティを見つめることが大事。僕もハーフなのでマイノリティ」と言う。マイノリティに対する問題は、ウイグルでも中国でも、そして日本でも似たようなことが違う形で起きている普遍的なものだということだ。農業が盛んなウイグルだが、その点で言えば中国の農村地帯の貧困問題も深刻。視野を拡げて、中国の経済構造の不平等などにも目を向ける。日本は過渡期で、少子高齢化などの問題を抱えるが、見つめたくないものを見つめ、模索を続ける。「政府がやる」という思考から脱皮し、自分でものを考え、自分でものを考え表現することができない中国について考えることが、今日本にいる私たちにできることではないか。
(インタビュー・文・構成:世木亜矢子)
モーリー・ロバートソン氏プロフィール
「i-morley」の創始者、ミュージシャン、ラジオDJ、ジャーナリスト、作家。1991年以来、J-WAVE(81.3FM)などでラジオ・パーソナリティーとして活躍し、伝説的な深夜番組「Across The View」を司会。自由気ままに語り継ぐポッドキャスト「i-morley」はかつての深夜ラジオに心酔した人から初めて耳にするティーンエイジャーまで、広くリスナーの心をつかみ、52万人を越えるオーディエンスを獲得するに至る。2007年には、チベット・ラサでの取材を写真や映像でレポートする企画「チベトロニカ」の総指揮を務める。
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『ウイグルからきた少年』
2009年10月3日(土)より渋谷アップリンクで公開中
監督・脚本・編集:佐野伸寿
出演:ラスール・ウルミリャロフ、カエサル・ドイセハノフ、アナスタシア・ビルツォーバ、ダルジャン・オミルバエフ他
2008年/日本・ロシア・カザフスタン/65分
配給:アップリンク
公式サイト