webDICEが贈る新たな企画、〈スピーカーで正しく音楽を聴く“体感試聴会”〉が2009年9月10月、渋谷アップリンク・ファクトリーにて開催された。記念すべき第一回となるのは、ジム・オルークの純粋なオリジナル・アルバムとしては8年ぶりとなる新作『The Visitor』。全1曲、38分あまりのインストゥルメンタル・アルバムという規格外のスタイルに、びっしりと彼の美意識が張りめぐらされている。すべての楽器を自ら演奏し、さらにアレンジやレコーディング、ミックスまでをトータルで務め、実に200トラックを要したという。緻密な音響工作の独壇場と言える創作方法でありながら、聴きごこちはあくまでアコースティックかつオーガニックで、どこまでも心地よく、エモーショナルな世界が広がっているのだ。
会場のアップリンク・ファクトリーは、22時30分開演と深夜の開催ということもあり、渋谷の喧噪から隔離された落ち着いた空気と、ジム・オルークの新作をいち早くきけるという参加者の静かな興奮に満ちていた。“体感試聴会”は、現在残念ながら衰退してしまった、〈スピーカーで正しく音楽を聴く〉という行為の復権により、もういちど音楽ファンに音楽を聴く楽しさを伝えたいというテーマでスタート。今回参加していただいたレビュアーからも「音の立ち上がりが良い」「作品にじっくりとひたることができる」と好評だったアップリンク・ファクトリーのサウンドシステムにより、音楽家が本来意図していた音のディティールまでをたっぷりと感じてもらうことができる。普段ヘッドフォンやMP3で聴いているときには気づかなかった音作りの秘密、作品の本質や世界観をより感じてもらえる企画となっている。今後も続々と“体感試聴会”ならではの作品を取り上げる予定なので、どうぞお楽しみに。
会場となったアップリンク・ファクトリーの田口製作所スピーカー
ジム・オルーク プロフィール
アメリカ「ポスト・ロック」シーンの牽引者。 1969年シカゴ出身。10代後半にデレク・ベイリーと出会い、ギターの即興演奏をスタート。ガスター・デル・ソルなど多数のプロジェクトに参加し、シカゴ音響系の中心的存在となる。1999年のソロ・アルバム『ユリイカ』は、ポップ・ミュージックのファンからも高い支持を得る。近年ではソニック・ユースのメンバー兼音楽監督としても活動(2005年末に脱退)。2004年にウィルコのプロデューサーとしてグラミー賞を受賞。日本文化への造詣も深いことで知られ、くるり、ボアダムス、カヒミ・カリィ、中原昌也らとのコラボレーションや、映画監督・若松考二の作品の評論など活動を広げている。
ジム・オルーク『The Visitor』
2009年9月16日リリースPCD-93291
2,415円(税込)
P-VINE
2001年に発表された名作『インシグニフィカンス』
以来、約8年ぶりとなるニューアルバム
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