骰子の眼

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東京都 ------

2009-07-31 10:00


情報誌「Choice!」連動企画スタート:野田秀樹作品に連続出演を果たす俳優・北村有起哉インタビュー

都内の劇場、映画館で配布されている厳選シアター情報誌「Choice!」との連動インタビュー企画“Artist Choice!”がスタート!
情報誌「Choice!」連動企画スタート:野田秀樹作品に連続出演を果たす俳優・北村有起哉インタビュー

厳選シアター情報誌「Choice!」との連動インタビュー企画“Artist Choice!”がスタートします。毎月「Choice!」に掲載されている演劇・映画界のアーティストインタビューをwebDICEでも掲載していきます。都内の劇場、映画館で配布されている「Choice!」本誌にはインタビューの他にもさまざまな映画・演劇の情報が満載、是非探してみてください。「Choice! vol.9」8月号は本日より配布されています。(→「Choice!」配布場所一覧

今回は8月20日から東京芸術劇場にて上演される野田秀樹氏、作・演出の舞台『ザ・ダイバー』( 日本バージョン)への出演が控える俳優・北村有起哉氏のインタビューです。

『パイパー』、そして『ザ・ダイバー』。今年、野田秀樹作品に連続出演を果たす北村有起哉。「いま、根拠のない気概(きがい)がある」とつぶやく彼が、演技表現の上で、最も大切にしていることとはいったい何だろう。


どんどん忘れられつつある
所作(しょさ)を粋に息づかせたい

「絶対、日本人の我々でやったほうが面白くなるだろうなという、根拠のない気概というか、やる気があるんです」

 『パイパー』に登板するより前。昨年『THE DIVER』が英国人キャストで上演される時点で、既に、野田秀樹から日本バージョンのオファーを受けていた。北村有起哉は、後に自身が演じることを前提にその舞台を観た。

「話自体が、お能だったり『源氏物語』だったりがベースに入ってますから。ホーム&アウェイの“ホーム”である日本人版がいまひとつだったら、情けない。僕も日舞(日本舞踊)をずっとやっていますが、日本人しかできない独特なものってあると思うんですね。襖の開け閉めとか、畳の歩き方とか。いま、どんどん忘れられて、ないがしろにされつつあること。でも、日本のものをやるときは、そういうところを押さえておいたほうが粋かなと。目のつかないようなところだからこそ、それはかっこいいことだと思うんです」

 所作というものは、たとえ素養がなくても、その美しさは伝わるものである。動き。そして、呼吸。美しいものに出逢ったとき、観客はその背景を知らぬまま、空間と空気が凛と引き締まる様に、背筋が伸びるのだ。

「劇場だと特にそうですよね。何か、香りがね。僕も客として、そう感じるときがあります。惜し偲(しの)ぶとか、阿吽(あうん)の呼吸とか、ワビサビ・・・・・・僕らにはそうした感覚が血として流れているはずです」


日本人として日本語を
音として発すること

 広げるより、深める。彼が重要視しているのは、そういうことかもしれないと思えてくる。

北村有起哉

「たとえばダンサーに必要なのは、やはりリズム感だと思う。歌手なら、当然、音感が必要になる。じゃあ役者は?となると、やっぱり言葉だと思うんですよ。日本語という言語には“ありがとう”や“さようなら”という綺麗な響きがある。で、日本語は、わりと難しい。普段からだらけたしゃべり方をしていると、舞台でもそれが出ちゃうので、日常のしゃべり方も意識はしています。なるべく、心地良い会話ができればな、と。高い声はちょっとした努力で出るようになる。でも低い声はずーっと積み重ねないと出ない気がします。台詞を発することが音だとすれば、音域が、音階が、あればあるほど自由自在に、それを調節して表現できる。ただ、何言ってるかわからなかったら、話にならない。どんなに低く小さな声でも、客席のいちばんうしろまで届かせることができなければ」

 言語表現とは音量ではない。それは言葉を届ける意志であり技術なのだ。

「こいつ、何言ってんのかわかんない。ということになると、お客さんは残酷だから、他の人に目がいったりする。物語の大事な台詞が抜け落ちてしまうと、作品の厚みもなくなってしまう。すごく冷静でいないといけません・・・・・・なんてカッコいいこと言ってますけど、酔っ払うと、全然そうじゃないんですけどね(笑)」

 この呼吸。北村有起哉が志向し、思考する「心地良い会話」の原理に、ちょっぴり触れられた気がした。


(取材:相田冬二、撮影:平田光二)

★このインタビューのロングバージョンは
厳選シアター情報誌「Choice!」公式サイトで読むことができます。


北村有起哉(きたむらゆきや)プロフィール

1998年に舞台『春のめざめ』、映画『カンゾー先生』でデビュー。その後、役柄、ジャンル、時代性などに一切とらわれない表現力で舞台・映画・TVと幅広く活動。『CLEANSKINS / きれいな肌』にて第7回朝日舞台芸術賞寺山修司賞、第15回読売演劇大賞優秀男優賞を受賞。最近の主な出演作品は、ドラマ『婚カツ!』、舞台『リボルバー』など。8月20日からは舞台『ザ・ダイバー』(日本バージョン)に出演する。
公式サイト


舞台情報

NODA・MAP『ザ・ダイバー』(日本バージョン)

『ザ・ダイバー』(日本バージョン)

2009年8月20日(木)~9月20日(日)
会場:東京芸術劇場 小ホール1
作・演出:野田秀樹
出演:大竹しのぶ / 渡辺いっけい / 北村有起哉 / 野田秀樹
公式サイト

チケット料金:一般6,500 円、サイドシート3,000 円
※全ステージ当日券販売あり
上演時間:80分 ※上演時間は変更になる可能性があります。
お問い合わせ先:東京芸術劇場チケットサービス(03-5985-1707)




厳選シアター情報誌
「Choice! vol.9」2009年8月号

厳選シアター情報誌「Choice!」は都内の劇場、映画館、カフェなどで無料で配布されており、毎号、演劇情報や映画情報を厳選して掲載。注目のアーティストをインタビューする連載“Artist Choice!”の他にも、演劇ライターの徳永京子氏による演劇レビュー、ライターの相田冬二氏による映画レビューが連載されています。

配布場所一覧
公式サイト

「Choice!」2009年8月号表紙

演劇ライター・徳永京子による演劇レビュー
Stage Choice!ラインナップ

『ザ・ダイバー』(日本バージョン)
シス・カンパニー『怪談 牡丹燈籠』
PARCO presents『狭き門より入れ』
劇団鹿殺し・回帰『赤とうがらし帝国』

ライター・相田冬二氏による映画レビュー
Cinema Choice!ラインナップ

『ポー川のひかり』(2009年8月1日公開)
『サマーウォーズ』(2009年8月1日公開)
『色即ぜねれいしょん』(2009年8月15日公開)
『セントアンナの奇跡』(現在公開中)


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