骰子の眼

cinema

東京都 渋谷区

2009-07-13 08:00


「負けるという選択肢は無かった」―世界初“プロサーファー”になった男、ショーン・トムソン インタビュー

70年代、プロサーファーという職業を確立した6人のサーファーたちの物語『バスティン・ダウン・ザ・ドア』が8/1公開!
「負けるという選択肢は無かった」―世界初“プロサーファー”になった男、ショーン・トムソン インタビュー
プロサーファーのショーン・トムソン (C) 2008 Bustin Down The Door, LLC

1974年、サーフィンのメッカ、ハワイ・オアフ島のノースショアに夢を追い求めて、南アフリカ、オーストラリアから6人の若者がやってきた。彼らの目的は、誰も成し得なかった先進的なアプローチでサーフィン界に革命を起こすこと。つまり、サーフィンをプロスポーツの競技へと確立することだ。現在では何億ドルもの金額が動く一大産業に発展したサーフィン業界の、その礎を築いた男たちの夢と希望、苦悩と挫折を描いたドキュメンタリー『バスティン・ダウン・ザ・ドア』がまもなく公開される。
その歴史を変えた6人のサーファーのうちの一人であり、本作の製作総指揮を務めたショーン・トムソンに、本作について話を訊いた。


── バスティン・クルー(※)の面々は、『バスティン・ダウン・ザ・ドア』の製作について初めて知ったときの反応はどうでしたか?

ショーン・トムソン:みんなこの映画で我々のストーリーが語られることに関して興奮していたよ。今までもいろいろな人たちがそれぞれの解釈で歴史上何が起こったかを語ろうとしてきたが、私たちはその当事者として歴史を正したかった。我々は真実に忠実であろうとした。サンタ・バーバラ映画祭で2,500人もの観客の前でプレミア上映されるまで誰も本作を観ていなかった。最初はみんな少しナーバスになっていたところもあったが、上映後はみんな感動していたよ。撮影中みんなに言ってたんだ、それぞれの最高のライディングシーンをきっちり見つけてきて映画に入れるからって。結局19本もの70年代サーフ映画からべストなシーンを引っ張ってきたんだ。

※バスティン・クルー…本作に出演している6人のサーファーのこと。イアン・カーンズ、マイケル・トムソン、ピーター・タウネンド、ウェイン・ラビット・バーソロミュー、マーク・リチャーズ、ショーン・トムソン
バスティン
一番右端がショーン・トムソン  (C) 2008 Bustin Down The Door, LLC

── あなた方が革命を起こしてから30年以上が経っています。今までの間、このストーリーが第三者から語られるべきだと思っていましたか?もっと前に作られているべきと思っていましたか?

ショーン・トムソン:真実を語る上で今がベストなタイミングだと思っている。75年の出来事について全く知らない世代がこの映画を観る。本作のストーリーは単なる昔話ではないんだ。あらゆるものを商業主義をベースとして動いている今の社会において、この映画はもっとシンプルでソウルフルだった時代、夢を追いかけること以外に何も持ち得なかった我々、そしてサーフィンの世界でその夢を成し遂げたことについてを描いていて、新しい世代は新鮮に感じると思うし共感してくれると思う。

── 本作でナレーションをしているエドワード・ノートンとの関わりについては?

ショーン・トムソン:映画の関係者を通じて知り合った。彼もサーファーで、ある日ラフ編集版を観てもらい、ナレーションをしてくれないかと頼むと、快諾してくれたんだ。このプロジェクトにとって非常に大きな出来事だったよ。そして彼が巨大なハリウッド映画の撮影のために訪れていたトロントに我々も行った。時間はタイトだったけど彼はとてもプロフェッショナルだった。ほとんどは1回のテイクでOKが出た。何回かは録音後に「いまのどうだった?だいじょうぶかな?」と我々に聞いてきたよ。あんなビッグ・ハリウッドスターがディレクションを求めてくるなんて何か信じられないと同時に変な感じだったよ。

── 初めてバスティン・クルーの面々に会ったときの印象は?

ショーン・トムソン:ラビットとMRとは75年にノースショアで出会った。ラビットは彼が空港に迎えに来てくれたとき、MRは自分やラビットが参戦していた大会であと1つしか無い出場枠を巡って争っていたとき。イアンは70年のオーストラリア・ベルズビーチでのワールドコンテスト、PTは72年サンディエゴでのワールドコンテストで知り合った。みんなすぐ仲良くなったが、同時にすごいライバルでもあった。互いにもの凄い競争心を持っていたよ。

── ショアにいるときのライフスタイルはどんな感じでしたか?

ショーン・トムソン:朝から晩までずっとサーフィンさ。1箇所最高のスポットがあって、みんな話し合っているわけでもないのに、必ず1日の終わりはそこで締めるんだ。私は誰よりもサーフィンをした。8時間ぶっ続けでやっていたこともある。最高の生活だった。人ごみも無く、楽しいことばかりの最高のヴァイブ。

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(C) 2008 Bustin Down The Door, LLC

── ハワイアンとのアティテュードのちがいは映画に描かれていますが、南アフリカとオーストラリアのサーファーの違いというものはあるのでしょうか?

ショーン・トムソン:南アフリカとオーストラリアには特別な共通点、意識がある。文化的に似ているんだ-ともに植民地の国、同じような英語教育システム、ラグビーやクリケットなどのスポーツ。我々はとてもスポーツマインドを持っていてサーフィンを単なるライフスタイルとしては捉えていなかった。南アフリカとオーストラリアの大きなちがいといえば、教育かもしれない。私とマイケルはともに大学へ進学したけど、オーストラリアの面々は早い段階から学校を離れている。自分は徴兵も経験している。

── 75年~76年の出来事のあと、あなたはどうしていたのですか?南アフリカに帰った?それともハワイに滞在したのですか?

ショーン・トムソン:ハワイにそのままいたよ。バスティン・クルー全員そうだった。プロになる夢を妨げるものは何もなかった。誰もハワイを離れることなど考えていなかった。負けるという選択肢は無かったんだ。

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(C) 2008 Bustin Down The Door, LLC

── 出演者たちとはもともと日頃から会っていたのですか?それとも撮影で久々に会うということが多かったのですか?

ショーン・トムソン:撮影で会うのは本当に楽しかった。普段はラビットやMRよりもPT、マイケル、イアンに会うことのほうが多いけど、メールのやりとりはしている。みんないまだに親友だ。

── 映画が完成したときの感想は?

ショーン・トムソン:映画製作の過程はすべてその場にいて見てきたので徐々に完成形が見えてきた感じだが、結局最終的に初めて観たのは映画祭で観客とともに観たとき。サンタ・バーバラ映画祭で2,500人の歓声と反応を見るのは凄い経験だった。ジェレミーとは隣りの席にいたんだけど、自分のサーフィン人生の中でも最高の瞬間の一つだった。

── 映画製作中に目標としていた映画はありましたか?

ショーン・トムソン:いや、それは無かった。単に若いサーファーたちの夢を追う姿勢と勇気、それを実現させるための努力の姿を描こうと思っただけだ。

── この映画を通して何を伝えたかったのですか?

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ショーン・トムソン:観る人には、夢というものがいかにパワフルなものか、その夢を叶えるには覚悟と勇気が必要だということ、そしてサーフィンはいかに素晴らしいスポーツかということを感じとってもらえたら嬉しい。サーフィンはあなたの人生を変えるだけのものを持っている、しかも良い方向に変えてくれるはずだ。

写真右:現在のショーン・トムソン

── 日本のファンにメッセージをください。

ショーン・トムソン:是非映画を楽しんでください。この映画はTシャツを売るためであったり、ボードを売るためであったり、サーフィンブランドのイメージを植えつけるために作られた映画ではありません。単に観る人に笑って泣いて楽しんでもらうために作った作品です。観るとき、自分がバスティン・クルーの一人だと思って観たら、大きな夢があり、巨大な波が押し寄せるように未来がある、それから逃げるのか、それとも立ち向かうのか。我々は決断をし、それが人生を変えたんだ。



『バスティン・ダウン・ザ・ドア』予告編


■SHAUN TOMSON ショーン・トムソン PROFILE

1955年8月21日、南アフリカ・ダーバン生まれ。南アフリカで最も成功をおさめたプロサーファー。南アで最大のサーフィン大会である「Gunston 500」で6回優勝、77年にはワールドタイトルを獲得。その人気は絶大で、78年のサーファーマガジンによる人気投票1位、Instinct ApparelやSolitude Clothingといったアパレル会社とのベンチャービジネスも大成功をおさめた。
歴史上もっとも偉大なチューブライダーと評され、99年のサーファーマガジンで20世紀で最も影響力サーファートップ25にも選出、04年のサーフィンマガジンでは史上最も偉大なサーファートップ16に選出された。現在はサーフライダーファウンデーションの議長をつとめ、03年、その年の自然保護活動に最も貢献した人物に贈られる「Environmentalist of the Year Award」を獲得。
最近のベストセラーである『Surfer’s Code - 12 Simple lessons for riding through life』の著者でもある。


『バスティン・ダウン・ザ・ドア』
2009年8月1日(土)よりシアターN渋谷にてロードショー

監督:ジェレミー・ゴッシュ
出演:ウェイン・ラビット・バーソロミュー、マーク・リチャーズ、ショーン・トムソン、ピーター・タウネンド、トム・カレン、ケリー・スレーター、他
2008年/アメリカ/96分
配給:キングレコード+ビーチカルチャー
公式サイト


【北から南まで、日本列島縦断上映キャラバン開催中】

公開に先立ち、全国各地のサーフスポット(海岸近くのライブハウス、カフェ、公民館/野外ビーチ)で全国キャラバン上映を開催しています。

★7月18日(土) 18:00
場所:神奈川・藤沢「海の家 くまざわや」
(神奈川県藤沢市鵠沼海岸 太陽の広場前ビーチ)

★7月20日(月・祝) 18:00
場所:宮城・仙台 七が浜
(宮城県七ヶ浜町花渕浜字大山1-1)

※映画上映の前売券1,000円 / 当日券1,300円
※各会場によりライブやイベントとジョイントして行なう場合があります。この場合チケット代以外の金額が掛かる場合があります。
※定員になり次第販売を終了することもございます。
※上映の条件が各会場により違う場合があります。

詳しくはコチラ:キャラバンツアーblog(BEACH CULTURE)
http://www.beachculture.co.jp/2009/bdtd/

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