『生かされない教訓』(1971) 監督:ワレンチン・カラヴァエフ 東西ドイツが再統合するとナチスの悪夢が甦ると煽りベルリンの壁を正当化するプロパガンダ。元ナチ信者がドイツの復権を夢見て東へ向かい行進するが、ベルリンの壁に阻まれてすごすごと退却する。
ソヴィエト政府がプロパガンダの一環として、アニメーション表現にまで着手していた事実をご存知だろか。ソヴィエト・ドキュメンタリーの始祖とも呼ばれるジガ・ヴェルトフのアニメーションや、ロシア・アヴァンギャルドの巨匠マヤコフスキーの詩で構成されたフィルム作品の上映『ロシア革命アニメーション1924-1979』が、6月6日よりアップリンク・ファクトリーで開催される。
『チェブラーシカ』や、宮崎駿に大きな影響を与えた『雪の女王』、またはノルシュテインの切り絵アニメをロシア・アニメーションの表の顔だとするならば、こちらは我々にはこれまで窺い知れなかったダークサイド。1917年に始まった共産主義革命の過程で、資本家やファシズムそしてアメリカを徹底的に否定し、革命の成果を誇示するために、早くからアニメーションのイメージ伝達の即効性に着目していたソヴィエト政府は、人民を洗脳する手段として、共産主義プロパガンダを目的としたアニメという特異なジャンルを80年代末の体制崩壊まで一貫して発展させていった。
『射撃場』(1979) 監督:ウラジーミル・タラソフ アメリカの失業者の若者が射撃場で生きた標的になるという職を得る。生身の人間を実弾で狙うこのゲームは大当たり。アメコミ以上にポップな記号に満ち溢れた傑作。
今見ると逆にカテゴライズ不能、ポップで刺激的なこれら短編アニメーションの数々―ジガ・ヴェルトフによるロシア・アヴァンギャルドの影響色濃いソ連最初期のアニメや、ロシア未来派の雄マヤコフスキーに捧げられたコラージュ・ワーク、そして米ソ冷戦真只中に、資本主義批判の建前のもとに敵国アメリカ以上のポップカルチャー趣味を炸裂させてしまった謎のアジテーション・アニメまで―いずれ劣らずクールでキッチュな全16作品を一挙公開。
『レーニンのキノ・プラウダ』(1924) 監督:ジガ・ヴェルトフ 1924年レーニン死去。しかし共産主義革命の足取りは止まらない。10万人ものソ連人民が共産党に入党したのだ。
期間中は、巻上公一、佐々木敦、石田尚志、黒坂圭太、山村浩二、大山慶らのトークイベントも開催されるので、是非この機会に貴重なロシア・アニメーションを堪能してみよう。
『ロシア革命アニメーション1924-1979/ロシア・アヴァンギャルドからプロパガンダへ』
2009年6月6日(土)より渋谷アップリンクXにて公開
Aプロ:『ソビエトのおもちゃ』(監督:ジガ・ヴェルトフ)、他7作品(計81分)
Bプロ:『惑星革命』(監督:ゼノン・コミッサレンコ、ユーリー・メルクーロフ)、他7作品(計81分)
配給:竹書房
【トークイベント開催】
・6月9日(火) 18:40の回上映終了後
巻上公一(ヒカシュー)×佐々木敦(HEADZ)
・6月21日(日) 18:40の回上映終了後
石田尚志(映像作家/美術家)×黒坂圭太(アニメーション作家)
・6月27日(土) 18:40の回上映終了後
山村浩二(アニメーション作家)×大山慶(アニメーション作家)
※詳細は公式サイトにて