骰子の眼

stage

東京都 世田谷区

2009-05-14 18:53


「そこにある身体と生の音に、無条件のストーリーを味わってほしい」 ―JUNRAY DANCE CHANG『アオイロ劇場』5/15より開幕

3年前に大好評だった『JUNRAY DANCE CHANG』が、まもなく世田谷パブリックシアターで開催される。中心メンバーのASA-CHANGとU-zhaanに直前インタビュー!
「そこにある身体と生の音に、無条件のストーリーを味わってほしい」 ―JUNRAY DANCE CHANG『アオイロ劇場』5/15より開幕
(左から)ASA-CHANG、U-zhaan

2006年3月、六本木スーパーデラックスで好評を博した公演『JUNRAY DANCE CHANG(ジュンレイ ダンス チャン)』が、さらに進化をして世田谷パブリックシアターで5月15日より3日間おこなわれることになった。「声もひとつの楽器」をコンセプトに、独自の音楽を発信するユニット『ASA-CHANG&巡礼』が中心となり、個性豊かなダンサー・俳優・ミュージシャン・美術作家がと共に、ダンスと音楽のコラボレーションにとどまらない、斬新で新しい舞台を見せてくれる。
この公演の中心人物となる『ASA-CHANG&巡礼』のASA-CHANGとタブラ奏者のU-zhaan(ユザーン)に、稽古真っ最中のなか話を訊いた。


催し物? うたげ? もっと言えば見世物。すごく猥雑に聞こえるけど、そういうところを踏まえたい

── そもそも『JUNRAY DANCE CHANG』というプロジェクト公演を始めようとしたきっかけは何だったのですか?

ASA-CHANG

ASA-CHANG:巡礼とダンスという公演は、僕らが企画を立てたわけではなかったんです。2001年に『花』というアルバムを出したときに、ダンスカンパニーやコンテンポラリーダンサーの方から「『花』を使わせてくれませんか?」といった使用許諾みたいな問い合わせをたくさんもらったんです。

写真:ASA-CHANG

── 音楽界ではなく、ダンサーの方からですか?

ASA-CHANG:ちょっと予想外の展開に、「なんで?何?何?」みたいなことになって。僕らからコンテンポラリーダンスにアプローチしたんじゃなくて、ダンス界隈からアクセスされて気が付いたんです。で、もともとダンサーの康本雅子さんや、ダンスカンパニー「イデビアン・クルー」のメンバーが友達だったりとか。自然な流れに近い形で、誰々が言い出したわけでもなく、この企画が始まりましたね。


── なぜ、ダンス界の方たちを惹きつけたと思いますか?

U-zhaan:振付けたくなるような曲だからだと思います(笑)。康本雅子さんなどが『花』のPVで踊ってくれたり、井手茂太さん(イデビアン・クルー主宰)が振り付けをしてくれたりとか。確かにダンスの公演とか見てると分かるような気がしますよね、巡礼の曲につけたくなるだろうなって。

ASA-CHANG&巡礼 『花』PV↓

── そういった流れで、初めてダンサーの方たちと公演をされたんですね。今回の新しい試みはどのような部分でしょうか?

ASA-CHANG:『JUNRAY DANCE CHANG』という公演名やプロジェクトの主旨は一緒なんですが、まったく別物と考えてます。劇場なので前回とはやりようも違いますしね。

── スーパーデラックスというライブハウスから、今回は世田谷パブリックシアターでの公演という形ですが、ライブかショーかというイメージの違いはありますか?

ASA-CHANG:あります。催し物? うたげ? もっと言えば見世物ですね。いま言った言葉はすごく猥雑に聞こえると思うんですけど、そういうところを踏まえたいなと。

JUNRAY DANCE CHANG04
『JUNRAY DANCE CHANG』(スーパーデラックス2006)公演

── 個性的な方々が出演されますが、直接声をかけていったんですか?

U-zhaan:こちらから声をかけた人もいるし、あと、今回はオーディションをして、そこから参加してくれた人も何人かします。

── たくさん来られたのではないですか。

ASA-CHANG:結構来ましたよ。日本ではダンサーのオーディション自体が意外と少ないみたいで、ものすごい数の写真と履歴書を見た覚えがありますね。

U-zhaan:僕は立ち会えてないんですけど、知り合いとか来なかった?

ASA-CHANG:それは言えない話だから(笑)。

── 今回タップダンサーの熊谷和徳さんが出演されますね。

ASA-CHANG:オーディションの人は別ですが、主要メンバーと思われる人はつながりが多かれ少なかれある人なんです。カズ(=熊谷和徳)は去年イベントで一緒だったんです。リハをやったときにウマが合うのはすぐ分かりましたね。とても素晴らしいタップダンス…というより、リズミストといいますか、リズムが素晴らしい。格好のつけ方もかっこいいなと思いました。お互いに忙しくて、バラバラに次の仕事に行ってたりしてたので、今回是非やらないかと誘ったんです。それに、彼の持っている雰囲気と、U-zhaanの雰囲気が、僕の中ですごく似ているものを感じて。二人を一緒のステージで観てみたいなぁって思ったんです。

U-zhaan:ASA-CHANG以外の人にも、似ていると言われたことありますからね。

ASA-CHANG:顔つきとかそういうことじゃなくて、やっているものに対する求道的な感じと、対極的な部分と両方似てるなぁと思って。

── それは見どころですね。

ASA-CHANG:そうなんですよ。でも、見どころはもっといっぱいありますよ。

ライブであってライブじゃなくて、ダンスであってダンスの公演じゃない

── ちょうどいま稽古真っ最中ですよね。

JUNRAY DANCE CHANG03

ASA-CHANG:ものすごく長い時間やってますね。僕が振り付けを出来るわけもないので、振り付けは菅尾なぎささんが中心となってやっています。僕自身、ダンスのリハーサルから舞台公演に至るまでの流れというのは初めてなんですよね。前回のスーパーデラックスはライブハウスだったので、それほど日数もなく組み上げらることができたんですけど。世田谷パブリックシアターでやる意味というか、難しさと面白さというのがすごくあるところですね。

写真:『JUNRAY DANCE CHANG』(スーパーデラックス2006)公演

── 構成・演出・音楽とすべてASA-CHANGがされているんですけども、難しかったところは?

ASA-CHANG:演出といっても、僕の好みを言ってるだけですからね。こうしたら面白いんじゃないかとか、好みでしかないですから。でも、僕達だけでつくっているわけじゃないので、もちろんダンサー側からの意見もあります。


── この公演のテーマは何でしょうか?

ASA-CHANG:テーマですかぁ…それが言えたら、公演やらないかもしれないですね(笑)。

── 一言では言えないような?

JUNRAY DANCE CHANG02

ASA-CHANG:そうですね。こうなるとオールスター・オムニバス大会みたいなものを想像してしまうかもしれないんですけど。そうならない、もっとグルーヴ感というか、『JUNRAY DANCE CHANG』というプロジェクトなんだという意思がすごく強いです。さっきも言ったように、U-zhaanと熊谷和徳さんが似てるとかそういう部分もあるかもしれないけど、もっと流れていくような。簡単に言えば、曲が変わってどんどん変わってしまうオムニバス的なモノになってしまうところを、もっと流れをつくっていきたいなと思っています。難しいのは、ライブであってライブじゃなくて、ダンスであってダンスの公演じゃないので、そこら辺の案配というか。どっちに比重のあるシーンなのかとか、そういうのをすごく考えていかないといけないなぁと、いま稽古しながら思っているところです。

写真:『JUNRAY DANCE CHANG』(スーパーデラックス2006)公演

── 基本的にダンスですが、ストーリー的なものはありますか?

ASA-CHANG:ストーリーと言えるものより、そういう風に匂わせるものはすごく出してますね。じんわりじんわり、みんなそれぞれが違うことを思ってくれてもいいような。笑っちゃっている人もいれば、グッとくる人もいるという深みがあるというのがいいですね。

── 見た人それぞれの受け取り方というか。

ASA-CHANG:僕は好きなコンテンポラリーダンスのカンパニーを見て、思うところはそこですね。ストーリーを押し付けない。いろいろな人に間口というか、心の考えるところをすごく開けているカンパニーの方が美しいなと思います。

── 今回、空間美術にもこだわりがありそうですね。

ASA-CHANG:そうですね。空間が広いですね(笑)。

U-zhaan:今回は空間美術を大御所にお願いして。

ASA-CHANG:宇治野宗輝さん。宇治野さんとも以前ご一緒したことがあって。彼は舞台美術は初めてで、僕は彼の“作品”と言うより、彼の“物質”にとても共感を持っています。造りがとても丁寧。なんでここまで丁寧につくるんだろうと。

U-zhaan:もう変態的に丁寧だよね(笑)。

ASA-CHANG:舞台でどういう風に彼が展開するんだろう、面白そうだなと思って。彼がつくるものには、どデカイ櫓(やぐら)みたいなのもありますね。

── 衣装はシアタープロダクツで。

U-zaaan

U-zhaan:人からの推薦があったので。シアタープロダクツってすごい人気なんですね。いろいろな人から、シアタープロダクツの衣装で今度何かやるんでしょって、そこを一番言われますよ。ANI(スチャダラパー)が何するの?とも訊かれるけど。

写真:U-zhaan

── ANIさんが舞台に出られるのには驚きました。

U-zhaan:何をするかは見てのお楽しみで。

ASA-CHANG:ラップしたっていいですよね、これがコンテンポラリーのダンスの公演じゃないとすれば。でも、ラップはしないと思う。何したって良いわけなんですが。


── ASA-CHANGから誘ったんですか?

ASA-CHANG:そうです。まさか、ANIから出させてとか(笑)あんまりそういうタイプの人ではない。

U-zhaan:オーディションに来るとかね(笑)。

ASA-CHANG:彼はそういう部分ではスチャダラパーの中でも不思議というか、面白いキャラクターですよね。今回は、気持ちの機微みたいなものを表現できる人が多いのかな。なので、切なくなったり大きくはしゃいだりとか。深いところが共有できるかなと思いますね。

ストーリーではなく、もっと大きなイメージを受け取ってほしい

── 今回『アオイロ劇場』という公演名が付いていますが、どのような意味があるのですか?

talk01

ASA-CHANG:意味と言えば、書いた時にカタカナで「アオイロ」っていうのはよりキレイかなと。いつもロゴ的な考えでバンド名やユニット名を考えるんですけど、そういう時と似た感覚で付けましたね。あまりそこに意図することは最初はない、書いているうちに意味というものがどんどん出てくるという。

U-zhaan:これ、ほんとは他のとこで使おうとしてたタイトルなんですけどね。

ASA-CHANG:自分たちのオーガナイズのイベントをやるときのタイトルを、『アオイロ劇場』にしようと前から言っていて。なんかピンと来た、というしかないんですよね。


── 音楽は舞台用につくられた曲もあるんですか?

ASA-CHANG:書下ろしというのはないですけど、初演曲がたくさんあります。新譜『影の無いヒト』(6月17日発売)をつくったばかりなので。

U-zhaan:そのアルバムから初披露の曲もあります。

── では、今回の意気込みを聞かせてください。

ASA-CHANG:終わった後に、いい気持ちになれるような。

U-zhaan:自分が?

ASA-CHANG:お客さんがだよ!(笑)。そんな水泳終わって金メダルとって気持ちいいみたいな、そんなんじゃないよ。

U-zhaan:そういうのじゃないんだ、よかった(笑)。

ASA-CHANG:なんていうんですかね、合わせ技がとても難しい。巡礼の音楽とダンスがとても相性がいいだけに… もっとこうって。楽しく難しいというか。観ている人にそれを感じさせないといいですね。ストーリーとかではなく、もっと大きなイメージを受け取ってもらえればと思います。ストーリーなら映画を観ればいいと思うし。映画の感覚ではなくて、身体がそこにあって音が生だから、無条件のストーリーを味わってほしいなと思いますね。

── では、U-zhaanさんの意気込みを。

U-zhaan:僕が公演に向けてやらなきゃいけないことが今、明確にあって、それをなんとかしようという感じです。今はまだ意気込むとかというより、少し大変な作業段階というか。

ASA-CHANG:初演は苦悩や苦痛ですよ。自転車でいえば、いまは手放し運転みたいな感じで、そういう時ですね。

(取材・文:牧智美 / 協力:プリコグ)

■ASA-CHANG&巡礼 PROFILE

パーカッショニストのASA-CHANG、プログラマーの浦山秀彦、タブラ奏者のU-zhaanの3名で構成。「声もひとつの楽器」をコンセプトに、言葉を分子レベルまでカットアップし、ダブラと語りかける“発明的”な楽曲から、ロック、エスニック、クラブ系アンビエント・サウンドなど幅広いサウンドで、聴く者を不思議な空気で包む。01年、セカンド・アルバム『花』が各方面から絶大な評価を得て、表題曲「花」は同年公開された映画『けものがれ、俺らの猿と』(原作・町田康)のエンディング曲となる。またイギリスのレーベル「Leaf」より、『JUNRAY SONG CHANG』をリリース、英国WIRE誌の2002年ベストアルバム第4位に選ばれるなど、ヨーロッパ各地から絶大な評価を受ける。その他、「つきぶねと言ってみた」「背中」「カな」などのビデオ・クリックでの個性的なダンサー起用が、音楽界のみならずダンス界、映像界にて大きな話題を呼んでいる。
6月17日には4年ぶりの新譜『影の無いヒト』をリリース、6月30日にレコ発ライブ『グッドラック巡礼』(渋谷O-nest)、8月9日に夏フェス『WORLD HAPINESS 2009』の出演が決定している。
・ASA-CHANG&巡礼 公式サイト http://www.junray.com/


『JUNRAY DANCE CHANG アオイロ劇場』
2009年5月15日(金)20:00開演 / 16日(土)15:00開演 / 17日(日)15:00開演

会場:世田谷パブリックシアター(東京都世田谷区太子堂4-1-1)[地図を表示]
音楽・演奏:ASA-CHANG&巡礼
構成・総合演出:ASA-CHANG×菅尾なぎさ
振付・出演:熊谷和徳/菅尾なぎさ/斉藤美音子/康本雅子
出演:ANI(スチャダラパー)/井手茂太/上田創/酒井幸菜/佐藤亮介/鈴木美奈子/須加めぐみ/中村達哉/中澤聖子/松之木天辺メガネ/U-zhaan/ASA-CHANG
空間美術:宇治野宗輝×ASA-CHANG
衣装:シアタープロダクツ/TIMETRON

※チケットご予約はコチラから
※詳細は特設ウェブサイト
★『アオイロ写真展』がラフォーレ原宿(2F)で5月17日まで開催中!

『アオイロ劇場』スペシャル動画

レビュー(0)


コメント(0)