2003年ロシア連邦トゥバ共和国で開催された「第4回国際ホーメイフェスティバル」で「アヴァンギャルド賞」を受賞し、日本でホーメイの名手として知られる一方、電子聴診器や電気式人工喉頭といった医療機器を導入し、自らの心臓の鼓動の速度を制御しながらそのリズムを光明減に還元するなど、音楽とアートのジャンルを横断しながら自らの「声」と「身体」を主な素材とした表現活動を続ける山川冬樹氏。
一度みたら忘れられないパフォーマンスで圧倒的な存在感を放つ山川氏に、今回のイベントを中心に話を伺った。
BABY-Qの東野祥子さんとrokapenisさんと共演することになったいきさつは?
アップリンクさんからお誘いいただきました。僕もヨーコちゃん(東野祥子さん)とはやりたかったし、是非、とお受けしました。
他のジャンルのアーティストと共演するとき、心がけていることは何ですか。
その相手によって違うと思いますが、お互いの「血」ですかね。
東野祥子さんのダンス・パフォーマンスについてどう思われますか。
そもそも最初にコンテンポラリー・ダンスに興味を持ったきっかけが、ヨーコちゃんだったんですね。今では、僕もダンサーでもないのに、ベネチアビエンナーレのコンテンポラリー・ダンスフェスティバルに呼んでいただいたり、何かとダンスと縁があるんですが、以前は全然興味がなかったんです。あれいつだったかな? かなり前になると思いますけど、青山CAYにライブを観に行ったとき、たまたまヨーコちゃんが踊っていたんです。それを見て僕の中のダンスの既成イメージが徹底的に破壊されまして、それからコンテンポラリー・ダンスに興味が出てきた。彼女のように、他のジャンルへ単身越境し、尚かつアクチュアルな都市のテンションと対等に張り合えるダンサーって他にいませんよね。
今回の『禁断のセッション』、テーマはありますか。
今回はセッションということもあり、即興性の強いものになると思います。とはいっても、もちろん準備はしています。
どのようなパフォーマンスや表現をしたいと考えていますか。
月並みな言葉になりますが、ヨーコちゃん、rokapenisさんが持っているものと重なることで、化学反応が起きるようなことをしたいと思っています。
電子聴診器を用いた、心音と電球のパフォーマンスはいつ頃からされているのですか。そのアイデアはどこから生まれたものなのですか。
そもそものきっかけは、一緒にバンドをやっていたメンバーがみんな就職してしまって、1人でバンドをやろうとしたんですよね。ホーメイが歌えるし、ギターが弾ける、あとはドラムか…と考えてた時に、心臓でドラムができないかなと思って、さっそく電子聴診器をゲットしました。最初は勝手に鳴ってくれればいいやと思って始めたんですが、色々やってるうちに鼓動が呼吸によって大きく変化することに気づき、それから意図的にコントロールするようになりました。
最初に心臓の鼓動のパフォーマンスをやったのは、2003年のICC(NTTインターコミュニケーション・センター)だったと思います。その時はまだ電球を使っていなくて、鼓動に合わせてオシロスコープの波形の映像が波打つというものでした。その次が旧アップリンク・ファクトリーで、その時はじめて電球を使いました。電球を使ったのは、音が鼓膜と皮膚を刺激するのと同じように、観客の網膜を直接的に刺激し、知覚レベルで僕の身体のパルスをぶつけたかったからです。その前は映像を使った訳ですが、映像だとそれよりも知的な認知レベルで受容されてしまうので、それがいやだったんですね。
心音でなにを表現しようとしているのですか。
結果的に起きたことから色々導き出せるとは思います。ただ僕が考えているのは、心臓は心臓、音は音、光は光、ロックンロールはロックンロールみたいな、、、ローリングストーンズの「It's only Rock'n roll」はノリノリで心臓をステージで突き刺してしまう歌ですが、気分的にはあんな感じです。
ホーメイなど肉体を素材として使ったパフォーマンスをみて、全身の感覚が釘付けになってしまいました。山川さんが肉体にこだわる理由はなんでしょうか。
こだわっているというよりも、素材として一番そばにあったから、、、というのが素直な答えです。僕は自分の身体を他者のように考えているところがあります。内臓は自分の意志と直接関係なく活動していて、心臓の鼓動に合わせて歌っていると、誰かと一緒に演奏しているような気持ちになります。演奏家としての心臓は明らかに僕からすると向こう側にいる「他者」なんですね。これを音と光でうまく空間に放出すると、そこにいる僕の自己と、その中の他者、観客の自己と、その中の他者が、かく乱されて、それぞれの境界が崩れたり、曖昧になってくる。それが面白くてやってるんだと思います。
これから挑戦したいことがあれば教えてください。
具体的にやりたいことは色々ありますね。先日、東京都写真美術館で、「the Voice-over」というインスタレーション作品を発表しました。これは良くやっている「パフォーマンス」とは形式的には全く異なった、細部まで厳密なコンポジションによって構成された、シネマスクリーンとサラウンドシステムからなる作品です。たぶん僕の中には、動物的攻撃性と、細密画的内向性とが共存していて、ライブパフォーマンスは前者から、「the Voice-over」は後者から生まれているような気がします。今後は後者からももっとアウトプットしていきたいですね。
海外での活動予定はありますか。
5月にドイツ、ポーランド公演の予定があります。8月にはロシア連邦トゥバ共和国で第5回国際ホーメイシンポジウムが開かれるので、巻上公一さんたちと参加する予定です。
ますます今後の活躍が期待される山川冬樹さん、ありがとうございました。3月14日の『禁断のセッションvol.04』ではどんなパフォーマンスがでてくるのか、それは貴方の目で確かめてください。
※上の画像は山川冬樹(photo:Makiko Sasanuma)
『禁断のセッションvol.04』
3月14日(金)
時間:開場19:30/開演20:00
会場:アップリンク・ファクトリー(東京都渋谷区宇田川町37-18 トツネビル1F)
料金:予約2,000円 当日2,200円(共に1ドリンク付)
- 出演:
- 山川冬樹(music)
1973年ロンドン生まれ。ホーメイ歌手/アーティスト自らの「声」と「身体」をプラットフォームに、音楽、舞台芸術、美術の境界線をまたにかけた脱領域的活動を展開。 - 東野祥子(dance)
BABY-Q主宰、振付家・ダンサー。身体を軸にダンスを織り成す様々な要素をコラージュし、強烈な世界観を提示する。ソロ活動では数多くのミュージシャンとのセッションを行い国内外で高い評価を得ている。 - rokapenis(visual)
VJ/映像作家。先鋭的、アヴァンギャルドな持ち味で、様々なクラブイベント・ライブハウスでVJとしてその空間を生かした映像世界を構築し、独自の毒を振りまく。BABY-Qの映像作家として国内外の公演に参加。
新作を立て続けに発表し快進撃を続けるダンスカンパニー「BABY-Q」を主宰する東野祥子と、映像作家rokapenisが毎回ゲストを招いて織り成す禁断のライブセッションシリーズの第四弾。自身の身体を駆使したビジュアルショッキングな演奏とその圧倒的な存在感により各所で話題の山川冬樹をゲストに迎えての開催!
【チケット予約方法】
下記項目を明記の上、件名を『予約/禁断のセッション』とし、メールにてお申込みください。
(1)お名前 (2)予約人数 (3)電話番号 (4)住所
factory@uplink.co.jp