骰子の眼

cinema

東京都 渋谷区

2009-03-25 11:30


映画の愛に☆直感 第1回:ヌーベルなバーグであり、書を捨て街に出るのである! 変態群像劇『バサラ人間』

熊切和嘉や山下敦弘など若手監督作品の映画音楽を手がける松本章氏が、映画への愛をぶつけるべく連載コラム「映画の愛に☆直感」をスタート。インディーズ作品からハリウッド・メジャー作品まで、松本氏が直感でバシバシ言葉を吐き出します!第1回目は、活弁映画監督の山田広野が手掛けた初の長編映画『バサラ人間』をご紹介。


バサラって何?と先ず思うのでした。それは、婆娑羅と書き室町時代の初期に遡る権力、規則から逃れた自由な人間を指す。で、バサラ人間は、日本で最初のイラストレーターを自ら名乗った長尾みのる氏のイラストーリー(漫画69年刊行)がありまして、その伝説の漫画を元に、山田広野監督作の映画が、『バサラ人間』なのです。

今は昔、60年代は戦後も終わりを告げ(日本国?が)、世界の若者達が反抗、反逆、行動を起こした時代(五月革命、ウッドストック)であり、カルチャーも新たな価値、ピーター・マックスのサイケデリックアートなど、先端をいっておりますが、大国ベトナム戦争に突っ込んで、アメリカは病んでおったのです。

バサラ人間1

作品は、原作のバサラ人間の世界を中心に無限の広がりを監督は与え、60年代と現在(新宿)が同居するまさに、今は昔な不思議な絵になっておるのです。フィルターと照明の工夫と実際に60年を感じた人達(オナニス役の団時朗)と衣装のチャーマァ●ハイヂ(ディリシャスウィートス)のかわゆい衣装が、効果的なのでありまして、そして、随所にあるドタバタ人間模様は、まさにモンティーパイソンにある知性のある皮肉(笑い)があるのでした。

バサラ人間2

監督の濡れ場におけるモンタージュの活用は、とてもエロく、そして笑ったのです。モモコ役の仲村みうは実はエロくはなく、絶望の瞳に心が動きまくったのです。何かいいことはなかろうか、、、と、ふと見上げると新宿で見世物ショーをやっておるのですが、ベトコンもビックリなゲリラ撮影!!だ!!よく、逮捕されなかったなーと思いつつ、元気になるのです。リアルな通行人も拍手しておったのです。カメラを手に持ち、そしてゲリラで、自由にとる!!ヌーベルなバーグでありまして、書を捨て街に出るのである。


映画の中で時間が自由に進み、戻り、そしてリアルとファンタジーが入り乱れる。不滅・純粋の記号としてナッグ(采花)は、自由に自ら在るのです。ナッグの「あなたはわたし」そして、流れをつくりつつも、流れてゆく、もう時は戻らず、あの頃には戻れないのです。そこでもがく登場人物達、ワタスもリアルにもがいておるので、主人公オナニスの嘘で塗りかためられた人生を走馬灯のように思い出す、あのスローモーションは心に痛いのですた。最後のブラックなユーモア(ワタスは感じた)は、落ち込んだのですます。しかしながら、怪奇音楽から、教会音楽まで振り幅の広すぎる音楽のJ・A・シーザーの音楽と共にエンドロールが始まり、あ!外波山さんだ!と思ったりしてる間に、所謂エンドロールが終わり、カーテンコールが始まるのです。新宿の路上で登場人物、スタッフが元気に出てくるのです。そこに、監督の人への希望とユーモア、そして愛情を感じるのでありました。

バサラ人間3

ビビッと結論、ファンタジー(虚構)にリアル(ちゃんと芸ができる、いい意味でのハプニングなど)があるから、心がより良く動くのであります。久しぶりに、怪奇恐怖人間、ホーリーマウンテン、マリオバーバー観たいなーと思ったのです。ほな!!サラバ!でナマステ…

追記:
あらすじは、『バサラ人間』公式サイトを観てください。今回の映画の原稿書くにあたり、その他キーワードは、ガロ創刊、ジミヘン、安部公房、鈴木いずみ、フリージャズ、ビートルズ、太陽の塔、フランス現代思想、ジャズ喫茶(日本独自文化)、レゲー、日本赤軍(ある意味、日本独自)、日本の学生の運動、鈴木志朗康、ノーベンバーステップ(小澤、武光は凄すぎ)で、サン・ラは速すぎと感じました。興味の在る方は、図書館および古本屋で音読してくださいですます。


■松本章(まつもと・あきら)PROFILE

1973年生まれ、伊勢男子、現在西成在住。熊切和嘉監督全作品、山下敦弘初期作品の映画音楽をプロデュース。最近は、熊切和嘉監督『ノン子36歳(家事手伝い)』(全国上映中)、内藤隆嗣監督『不灯港』(7月上旬公開予定)、山﨑裕監督『トルソ』の音楽を手掛けた。特技は、直感。なりたいのは、音楽の、あつかいにくい新人?でした。
ブログ「新今昔日記第二巻」
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『バサラ人間』
2009年3月28日(土)より渋谷ユーロスペースにてレイトショー

監督は本作が本格長編第一弾となる、活弁映画監督の山田広野。これまで自ら監督した映画を自ら活弁をつけて上映するという独自のスタイルで活動を行ってきた山田監督が、今回は“活弁”を封印し、長編劇映画に挑んだ!原作は孤高のイラストレーター・長尾みのるの一大傑作『イラストーリー バサラ人間』(1969年刊行)。フーテン・ヒッピー・アングラ文化への回答として描かれたこの原作を、山田監督はサイケデリック・レトロフューチャーなビジュアル・センスを駆使して、愚かしくも愛おしい群像劇として映画化した。

監督:山田広野
作:長尾みのる『イラストーリー バサラ人間』(出版「よるひるプロ」)
音楽:J・A・シーザー(演劇実験室◎万有引力主宰 ex演劇実験室◎天井桟敷)
出演:団時朗、采花、仲村みう、久世律、OBIKA、佐々木ユメカ、演劇実験室◎万有引力、デリシャスウィートス、飯島洋一、野上正義、根岸季衣、螢雪次朗、他
2007年/日本/77分
配給・宣伝:スローラーナー
公式サイト


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