大学の親友である青年二人が、「自分たちが普段何気なく口に運んでいる食べ物についてもっと知っておきたい」と、無謀にも農業を始める。早速、アメリカでもっとも生産量の多い“トウモロコシ”を育てるため、国内最大の生産地であるアイオワ州の土地を借りて農作業に取り掛かる二人。実体験によって、アメリカ的現代農業の実情を目の当たりにした二人は、トウモロコシがどのように消費されるのか自分の目で確かめようと、全米30州を横断する旅に出る。はたしてその旅の果てに彼等が見た、日々の「食事」の正体とは・・・? 現代の食糧問題を見つめた衝撃のドキュメンタリー作品。
■アーロン・ウルフ監督より
僕がはじめてコーンを実際に見たのは、(ちなみに僕は植物としてもコーンが好きなんだけど、)映画を学ぶためにメキシコからアイオワに移り住んだ時だった。16年前のことだ。僕はアイオワの風景が大好きで、よくバイクで走り回ったものだったよ。だけど、そうやって走り回っている間は、こんなふうに自分がコーンをテーマにした映画を撮ったり、またそのコーンに問題があるなんて思いもしなかったよ。
でも本当は、僕がアイオワで学ぶ大分前から大きな変化がコーンに起こっていたんだ。それも、僕らの日常的な食生活の中で起きていた。初めに、より収穫量を増やそうとした農家たちが、交配によって遺伝子組み換え・コーンを作ったんだ。70年代初期には、コーン栽培に与えられる補助金の額も増加していった。米国ではまだ食糧が不足していたからだ。だけどこうした試みのせいで、現代になって様々な問題が引き起こされることになった。食糧の過剰生産や質の低下も、そのひとつだね。確かに食料品は安いけど、それは環境や健康や社会構造と引き換えにして得ているものだということを、僕たちは今やっと理解し始めたところだ。
今、僕たちの文化や農業のあり方に対して、様々な疑問が提示されている。もし、今アイオワをバイクで走ったら、有機農法のコーン畑や、安全な肉を作るために放し飼いにされた牛や水牛がいるところを見かけることだろう。また、様々な在来作物を守ろうと必死に頑張っている農家や温室もある。それらの光景を見ると、あなたはコロンブスが新大陸を発見したときと同じような感情を抱くかもしれない。それは、彼がスペインのイザベラ女王に書き送った手紙のように、「ここには黄金より価値のあるものがあります。それは、ヨーロッパ大陸を養うことのできる大量の作物です」というふうにね。
『キング・コーン 世界を作る魔法の一粒』
2009年4月25日(土)、シアター・イメージフォーラムにてロードショー
監督・製作:アーロン・ウルフ
出演:イアン・チーニー、カート・エリス、マイケル・ポーラン
2007年/アメリカ/90分
提供・配給:インターフィルム 配給協力・宣伝:エスパース・サロウ
公式サイト