骰子の眼

cinema

東京都 渋谷区

2009-03-12 20:40


「映画を撮り続けてこられたのは『ガール・スパークス』があったから」―石井裕也監督インディーズ代表作品DVD連続リリース

いとうせいこう氏が絶賛した映画『ガール・スパークス』の上映会が3月16日に開催される。
「映画を撮り続けてこられたのは『ガール・スパークス』があったから」―石井裕也監督インディーズ代表作品DVD連続リリース
石井裕也監督(右)と、『ガール・スパークス』や『ばけもの模様』に出演している落語家・桂都んぼ氏

インディーズで作った4本の長編が海外の映画祭で高く評価され、現在商業作品の制作を進めている石井裕也監督。その公開を来年に控え、インディーズ時代の作品がアップリンクから3ヶ月連続でリリースされる。第一弾は個性的な女子高生が主役の『ガール・スパークス』。ひたすら疾走する女子高生を主人公に、キレイ事ではない、見苦しくも剥き出しの青春像を鮮烈にスクリーンに叩きつけ、、いとうせいこう氏が自身のブログで「女の子がよく描けていてセリフも演出もよく」と絶賛し、観客の熱い共感を呼んだ。

ガール・スパークス01
主役を演じた井川あゆ子の熱演は、見る者にトラウマにも似た強い印象を残す。

「それまで『剥き出しにっぽん』(05年)、『反逆次郎の恋』(06年)や短編などをいくつか撮ってきて、僕の中でははっきりと手応えがあったんですけど、その当時は全然評判が良くなかったんです。“不潔だ”とか“下品だ”とか言われて。まあ、確かにそうですが」

ガール・スパークス02

思ったように周りの評価が得られず悩んだ結果、思い切って大衆性を取り入れてみようと作られたのが、『ガール・スパークス』だった。
「だけど、当時はやっぱり恥ずかしいという気持ちがありました。若者独特の潔癖性で、“女子高生を主役にして、もっと見てくれる人の数を増やしたい”とか、そういうのを考え始めた自分のことが」

ところが、結果的には劇場公開され、海外の多くの映画祭に招待されることとなった。世間から注目されるきっかけとなった、この作品をつくった意味は大きいという。
「『ガール・スパークス』を撮ってなかったら、多分、僕は今頃映画を続けられてなかったですから」


次回作からは商業映画という新しいステージに進む石井監督に、インディーズ時代を振り返ってもらった。
「僕の最後の自主映画『ばけもの模様』(07年)を撮ったのが24歳の時なんですが、実はこんなこと言うとできすぎてるけど、最初に『剥き出しにっぽん』を撮る20歳頃から、何となく24歳くらいでインディーズは卒業だっていう意識が強かったんです。大学に入ってから映画作り始めて、それを24歳くらいで一回まとめとかないと、僕の場合ダメだなっていう意識があって」

なぜダメなのだろうか。
「というのは、20歳くらいの時には僕が“俺の好きな映画をやりてえ!”と言えば、仲間がついてきて撮れたんですけど、25歳にもなると“ホンをとりあえず読ませてください”“スケジュールとギャランティの方は”というのが出てきて。当然なんですけどね。僕もそういう風になっていかないといけないんですけど。でもとにかく、その過程で今まで映画を何年間か撮ってきた僕の問題意識とか、これからの方向性や野望があって、そういうのがごちゃまぜになった。だから、こういう『ガール・スパークス』という映画ができたわけなんです」


■石井裕也PROFILE

1983年生まれ、埼玉県出身。大阪芸術大学の卒業制作として長編第一作『剥き出しにっぽん』(2005年)が、第29回ぴあフィルムフェスティバル「PFFアワード2007」にてグランプリ&音楽賞(TOKYO FM賞)を受賞。さらに第26回バンクーバー国際映画祭ドラゴン&タイガー・ヤングシネマ・アワードにノミネートされた。また、驚異的なスピードで長編映画『反逆次郎の恋』(2006年)、『ガール・スパークス』(2007年)、『ばけもの模様』(2007年)を製作。それら4本全ての長編映画が第37回ロッテルダム国際映画祭で特集上映されるなど、前代未聞の新人監督が出現したとして世界的なムーブメントに発展。2008年、アジア・フィルム・アワードでは、第1回「エドワード・ヤン記念」アジア新人監督大賞を受賞し、第32回香港国際映画祭では4本全ての長編映画が特集上映された。最新作『君と歩こう』は来年公開予定、現在『川の底からこんにちは(仮)』を製作中。
チャベス・シネマ


石井裕也監督作品3ヶ月連続リリース記念
『ガール・スパークス』上映会

2009年3月16日(月) 19:00開場/19:30開演
ゲスト:石井裕也監督
会場:アップリンク・ファクトリー
(東京都渋谷区宇田川町37-18 トツネビル1F)[地図を表示]
料金:1,500円(1ドリンク付)


「ガール・スパークス」ジャケット

DVD『ガール・スパークス』
アップリンクより発売中

世界中の全てにむかつきまくり、しかしその怒りがどこから来て、何に向ければ良いか分からず苛立っている女子校生・冴子と、ネジ工場を経営しながら家では女装して家事をこなす変人の父親。この奇妙な父娘の関係を軸に、行き先を見失ったダメ人間たちのいじましくも滑稽な奮闘を描く。

監督・脚本・編集:石井裕也
出演:井川あゆこ、猪股俊明、中村無何有、桂都んぼ
2007年/日本/本編94分+特典
価格:3,990円(税込)
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※4月は『ばけもの模様』、5月は『反逆次郎の恋』をリリースする予定です。



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