骰子の眼

art

東京都 渋谷区

2008-12-05 18:05


タナカカツキのハイビジョン映像革命!作品集『ALTOVISION』都内各所でイベント開催

映像表現の極地へ辿り着いたタナカカツキに、新しい作品集について話を訊いた。
タナカカツキのハイビジョン映像革命!作品集『ALTOVISION』都内各所でイベント開催

『バカドリル』『オッス!トン子ちゃん』などの漫画から、テレビ番組のオープニングCGやポップアートまで手がけるトップクリエイター、タナカカツキが満を持して発表する人類未踏の身体的映像体験作品『ALTOVISION』。ポニーキャニオンからリリースされていた“バーチャル・ドラッグシリーズ”の初Blu-ray版として12月17日に発売される。

この作品は、解像度の高いBlu-rayの特色を最大限に生かし、タナカカツキの美意識をハイスペックなテクノロジーで見事に映像化。そのクオリティの高さは、眼球で捉えられる許容量をはるかに超え脳内を魅了し、単なる刺激に満ちた映像トリップ作品とは一線を画している。また、プロデューサーや作曲家として知られる戸田誠司が手がけた4.0chフルサラウンドシステムにより、映像と音楽での表現が五感を震わせる作品集となっている。 この作品の発売記念イベントが都内各所でおこなわれる予定で、12月14日にはアップリンク・ファクトリーで上映+トーク+ライブが開催される。


── 『ALTOVISION』は、どういう経緯でつくることになったのですか?

15年ほど前からポニーキャニオンが“バーチャル・ドラッグシリーズ”という映像作品を発売していまして、僕はそのシリーズの大ファンで。当時はビデオだったんですけど、現在は映像の出力環境が随分と変わったので、ハイビジョンで“バーチャル・ドラッグシリーズ”を自分でつくれないかなと思って2年前からつくり始めたんです。それでたまたま、そのシリーズを担当していたプロデューサーの方を紹介されたんです。

── いまでも“バーチャル・ドラッグシリーズ”は続いているんですか?

一番最近では、2002年の頃にDVDで発売していて。それからしばらくは止まっていたので、今回久しぶりに出ることになります。というのは、いまやVJやiTunes、スクリーンセーバーなどのブラウザで、そういうドラッグ映像が観らるようになって、あまり目新しいものじゃなくなったんですよね。身近にコンピューターで生成したムービーが観られるようになったので、このシリーズはしばらく出なかったんだと思います。

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『ALTOVISION』より

★『ALTOVISION』動画はコチラから

── 初Blu-ray版ということですが、もちろんBlu-ray本体を持っていないと観れないということですよね?

そうですね。僕も持ってないですけど(笑)。DVDでも観れますが、画質が全然違います。再生はできても、Blu-rayバーションでは観れない。だから、「観れない」と言い切っていいと思います(笑)。映画をYouTubeで観るようなもので、それくらい違いがありますね。

── 今回、新しく挑戦したことは何ですか?

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普段からVJやコンピューターでつくった映像がたくさん観られるようになりましたよね。だから、僕はもっと情感よりの映像をずっとつくっていたんです。さらに映画になるとストーリーになっちゃうので、そっちにはいかないで、ちょうどその隙間というか間のような作品をいままでつくっていて。今回は、いまのスペックで表現できるものを一個一個つくっていったんです。

実はいまの映像で出来なかったことはたくさんありまして、たとえば、細い線をスキャンして映像で流すと全部つぶれてしまう。要するに、細い、小さい、というものが全部消えてしまう。色もそうなんです。テレビでは使っていけない色はたくさんありますし、してはいけない映像表現、規制があるんです。
そういったことで、僕らは映像がいま出力できるすべてを全然受け取っていないんですよね。そういう一部のモヤ~ッとした映像をすごく見せられているわけです。でも、それでもいいんですよね。ストーリーを感じるというのが大きく占めるユーザーの受け取り方だと思うので。


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映像をつくっている側としては、つくりながらそういうことがよくわかるんですよね。実際目で見るときと、映像を出したときは随分違ったりする。だから、つくっている人はあらかじめ細い線は使わない、コントラストをはっきりさせる、ピカピカさせない、輝いているような色は使えないからくすませるとか、そういうことを施して映像を出力している。
僕はそれをとにかく全部解き放って、次に発売される新しい液晶画面に標準を合わせてつくったんです。ここまで色が出るというのを技術者からレクチャーを受けて。たとえば、ひとつとして、3分間だったらこの色とこの線とこれを表現したいというところのギリギリできるところまでをつくる。もうひとつでは、液晶画面は黒色がすごく苦手だったから、黒をふんだんに使ったものをつくる。といった感じで、技術的なテーマでもって今回はつくっていきました。


── これってものすごく最先端ですよね。

めちゃくちゃ最先端ですよ(笑)。そういうことはマニアックな世界な話なので、普通はそんなこと感じないんですよ。アニメーションと映画撮影ってつくり方が全然違うのに、同じ環境で観させられるじゃないですか。本来は別物なんですけどね。同じ環境で観ると、どうしてもストーリーを追ってしまう。映画がほとんどストーリーにやられちゃってる現状があると思うんですよね。

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たとえば、音楽でも何を歌っていてどんな歌詞で、歌声で、というので聴いていた時代もありましたが、いまや歌詞がどうのっていう話はないですね。サザンオールスターズがデビューしたとき、「何いってるか聞こえへん」ってものすごく文句言われてたんですよ。いまではヒップホップが受け入れられるまでになりましたよね。昔だったらインストロメンタルがひと括りにされていたものが、いまは細分化されて音を一粒一粒聴くような人がでてきた。

音ではそういう状況があるんですけど、一方、映像がまったくないんですよね。やっぱり、みんなまだストーリーや何を言っているのかというふうに観るんです。いずれ「そればっかりじゃないぞ」っていうようなことに徐々に気づくと思うんですよ。映像は音楽の後追いしていってるんでしょうね。この映像キレイだとか、気持ちいいだとか、そんなふうに観る人も徐々に現れるかもしれません。現れているからこそ、VJみたいな状況があると思うんですけど。
なので、この作品集はそういったことのオススメですね。そういうふうに映像を観ましょうと(笑)。気持ちいい映像が広がってまっせっていうような(笑)。投げかけ、提案です。


── 確かに観ていたら気持ちよかったですね。

α波がすごく出てるはずなんですよ(笑)。確認作業でも大体起きてられないですもん、寝ちゃうんですよ。音楽監督は戸田誠司さんですね。4.0chフルサラウンドシステムで。最初は7.0chだったんですけど、やっぱり気持ち悪いと。

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── 映像のアイデアはどこから湧いてくるんですか?

さきほどと重複しますが、細い線がいままで出せなかったので今回は細い線を出そうという、まずはそこからですね。細い線をいっぱい集めてデザインして、それを何回も動かして、どういう動かし方が気持ちいいのかと。自分で機械に命令すると、計算してくれるんですよね。で、何日かしたら出来上がってくる。ある程度シュミレーションするんですけど、すべては想像できないんで、実際出てくると「あ!こうなるんだ」と。この線とこの線が合わさると、こうなってこうつぶれるんだというのがわかってくる。
その映像の中で、おいしいところだけついばんだりしていって、1作品3分を仕上げていくんですよ。全部で200時間くらいある中から、作品用に45分ついばんだと。だから半分自分でつくってないというか、半分くらい機械がつくっている。僕は選んでいる、チョイスしているという感じなんですよね。


── コンピューターでの制作は楽しかったですか?

楽しいですね。3日後にできてくると言われて、他のことをしながら待つじゃないですか。そうしたらアプリケーションが「ピロリ~ン!」っていい音を奏でて、出来上がってくるんですよ。「じゃあ見させてもらいましょか」っていう感じで見るんですね。全然ダメな場合もあるんですけど、「わ~!ここいいやん!」っていうのもあらわれるときがあるんです。日々それの繰り返しで、ゴミ箱がパンパンに(笑)。つくっていて楽しいですね。

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── 12月14日のアップリンクでのイベントは何を予定されていますか?

上映もさせていただきつつ、それだけではつまらないので「おしゃべりとライブ」。よくトーク&ライブってあるじゃないですか。トークがあって、ライブをする。それを僕は同時にしようかなと思ってるんですよ(笑)。ずっと僕がしゃべっていて、バックで戸田さんがライブをしていると。

── 誰かとトークをされるんですか?

基本一人でずっと説法をやります(笑)。『ALTOVISION』を流しながら、「現在の神はいます」といった法話を聞いていただきます(笑)。ぜひお越しください!


(取材・文:牧智美)

■タナカカツキPROFILE

1966年生まれ。マンガ家、映像作家、アーティスト。1985年小学館「週刊ビックコミックスピリッツ」誌にて新人漫画賞受賞、マンガ家デビュー。1991年PARCOのフリーペーパー「GOMES」誌にてマンガ家の天久聖一と共に『バカドリル』発表以来、『バカドリル』(扶桑社/1994)、『ブッチュくんオール百科』(ソニーマガジンズ/1999)『オッス!トン子ちゃん』(アジールデザイン/2002)などの著作多数。
さらに、映像作家としても数々の作品を発表。1995年フルCGアニメ『カエルマン』を発表後、2000年『ガスブック』(Design Exchange)、『RESFEST2000』(nowondvd)、『Effects』(MdN)などで映像作品の発表と上映。2002年映像作品集『SUNDAY』(nowondvd)発売。『スーパー一人ごっつDVD』、NHKみんなのうた『月』のアニメーション制作などこの他、CM、ビデオクリップ、テレビ番組のオープニングやジングル、スポット映像などの制作を多数おこなう。

タナカカツキ公式サイト
ALTOVISION


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タナカカツキ『ALTOVISION』発売記念イベント
2008年12月14日(日) 20:00開場/20:30開演

出演:タナカカツキ、戸田誠司
会場:アップリンク・ファクトリー
(東京都渋谷区宇田川町37-18 トツネビル1F)[地図を表示]
料金:1,800円(1ドリンク付)
★ご来場の皆様にもれなく秘密のお土産プレゼント!

※12月10日(水)~22日(月)アップリンク・ギャラリーにて展示『ALTOVISION』開催!

写真:『ALTOVISION』 Hi-VISION Blu-ray Disc
2008年12月17日発売
全15作品/45分/5,229円(税込)
販売元:ポニーキャニオン

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