2015-03-31

社会を変えるために必要なのは?——映画『NO(ノー)』—— このエントリーを含むはてなブックマーク 

 東京は先週末に桜が満開、日中は少し身体を動かすと汗ばむほどに気温も上がり、今冬唯一使用していた暖房器具である脱衣所のミニヒーターとパソコンデスク下のひざ暖板もつけずに済むようになりました。

 1月末の館友会員資格の更新で無料入場券を3枚入手したので、2月初頭から半ばにかけて下高井戸シネマで3週連続で映画を観てきました。

 一番印象深かったのは、1988年にチリで行われたピノチェト政権への信任投票で反対派側のテレビCMづくりを担当し、圧倒的に不利な条件下で政権側の脅迫に戦きながらも、反対派の勝利に貢献した広告マンを主人公にした『NO(ノー)』(監督:パブロ・ラライン、出演:ガエル・ガルシア・ベルナル他、原題“NO”、2012年、チリ・米国・メキシコ)。

 http://www.magichour.co.jp/no/

 と言うのも本作品が、批判者や反対派を次々と力でねじ伏せ、文字通り「やりたい放題」の安倍政権打倒のために何が必要なのかを、示唆するものだったからです。

 主人公である米国帰りの広告マンにCM作成を依頼した、反対派の人びとが元々用意していたCMは、政権側が反対派を力で容赦なく潰してきたことを告発するものでした。

 しかしそのような恐ろしい映像を観て「普通の人びと」が立ち上がることはありません。むしろ同じような目に遭わないために、大人しくしておこうと萎縮してしまうだけです。

 そこで広告マンは、ピノチェト政権が倒れ民政移管がなされたら、実現するであろう幸福で自由な生活を描き出すCMを製作します。さらに投票日が近づくと、人びとから恐怖や不安をぬぐい去るために、ピノチェト政権に対する「NO」の声の広がりを示唆するCMも流されます。

 その結果「普通の人びと」を動かすことに成功し、反対派は勝利したのです。

 つまり人びとに自由と幸福をもたらすべく社会を変えていくために必要なのは、批判や告発ではなく、解放の具体的ヴィジョンであり、恐怖や不安の払拭だということです。

 そしてそれが、僕自身も含めた安倍政権に対する反対派に欠けているのではないか、と。

 https://www.youtube.com/watch?v=MNrkmfQUWKA#t=109

 CM末尾に主人公の「今、この国は未来志向だ。真実を求め、夢を追う」という台詞が入ります。残念ながらスペイン語が全く出来ないので、翻訳としての正確さは分かりませんが、なぜか何度観ても涙が出て来ます。

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知世(Chise)

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知世(Chise)

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