2013-12-03

「歌と、ギターと、言葉」1、水野寝地 このエントリーを含むはてなブックマーク 

さて、今日から少しずつ、順番に出演者を紹介していきたいと思います。

まず、トップバッターを務める水野寝地。

彼との出会いは、かつて阿佐ヶ谷のガード下にあった、
「にぎやかな風」という福祉関係の小さなお店で、
今回4番手に登場する予定のTAQACYが、ギターによる弾き語りを集めたliveを企画した時でした。

1回聞いただけで、心に残った歌詞があった。

「きみと肌を重ねても、きみのことなにもわからなかったけど
 きみと笑ったら、きみのことよくわかった気がしたんだよ」
(『オムライス』)

これが男子のほんとうに持ち得る心情か私にはわからなかったけれど
(たぶん、偏見ですね。男性に対する警戒と期待とがごっちゃになっているんだろう)、
乙女心に訴えてくる歌詞なんで、なんとなく心に刻まれ、そのまま数年が過ぎ、
今回、「歌と、ギターと、言葉」を企画することになって、ふと思い出したのでした。

その数年前に彼のliveを見た時には、
まだ二十歳過ぎぐらい(当時)なのに妙におっさんっぽいダミ声で、
ひたすら生活の細々したことというか、雑感を歌う、
文学で言えば、アメリカのミニマリズムといった感じの人だな、ということぐらいだったのだけど、
その後作ったらしい『ピンサロ』という曲をyou tubeで見たら、
ずい分とぶっつけてくるものを感じたので、かなり印象が変わった。

ヤケクソというか、がむしゃらというか、あけすけというか。
これはかいつまんで言うと、彼女にふられた男がピンサロ嬢に心の慰めを得る、という歌で、
乙女心を持つ私からすると本来、ドン引きしそうな内容なのに(聞けばわかる)、
ふしぎと気にならず、むしろ何度でも聞いてしまった。

「足りないところ求めたあと 裏切りあって別れた
 悲しくて悔しくて泣き濡れて ひどく暑い夏だった
 不甲斐なくて泣いたあと ピンサロ行ってまた泣いた」
(『ピンサロ』)

かつてはミニマリズム止まりだったかも知れない言葉の羅列は、
傷を負ったがゆえの自然主義文学的な領域に到達し、
その心情の吐露は、人によっては悪趣味に聞こえるかも知れないけれど、
妙なパワーにあふれてる。

自虐と、別れた彼女へのエールと、置いていかれた悔しさと、でも生きてってやるという思いにあふれた歌。

「あなたが住んでるとてもとてもたくましいマンション
 幸せになれよ どうでもいいけど」
( 同 )

このあたりも好きだな。けど、メロディーと、彼のギターと、彼の声とをみんな合わせて聞かなきゃ、この歌のよさはわからないだろうけれど。

人は自分をどれだけさらけ出してもたぶん自分にはなれないし、
言葉は口にしたそばからぬぐい切れない違和感がつきまとう。
それでも自分の思いを歌にして、歌っていこうと決めた人の歌、とでも言おうか。

そう言えば、そんな歌詞の歌も新しいCDに入っていたっけ。

とは言ったところで、たぶん私は水野寝地の芯にまだ触れていないし、
彼も見せ切っていないだろうし、
私もなにも理解などしているわけではないのだけれど、
つまずいても立ち上がり、またつまずいてもまた立ち上がって、
壊れたものをふたたびつなぎ合わせ、貼り合わせ、ぼろぼろになってでも歌い続けていくことで、
彼は、その芯に持っているのだろう熱いかたまりを、
何年経っても、何十年経っても、持ち続けていくのではないだろうか。

ちなみに彼の印象をある種の女の子たちが色で表そうとすると、
紺色だの、くすんだ深緑色だの、やたら不鮮明な底の見えない色にたとえられるのらしい。
それを意識してかしないでか、新譜『喝采』のジャケは紺色です。
タイトルともなっている1曲目はやはり自虐的な歌ですが、
あのダミ声は作り声だったらしく、このアルバムではけっこうきれいな歌声も聞かせています。

あ、名前の読みは、水野しんじ、ではなくて「ネジ」です。

水野寝地 『ピンサロ』live映像
http://www.youtube.com/watch?v=AkFpIMHj1Co

水野寝地 HP
http://mizunoneji.web.fcw.com/

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Reiko.A presents 第7回JIZAIKAN「歌と、ギターと、言葉」
12月22日(日)at 蒲田Studio80

当日の詳細についてはこちら。

http://www.webdice.jp/event/detail/11428/?date=20131203

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Reiko.A/東 玲子

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