2013-10-05

『マイク・ミルズのうつの話』クロスレビュー:生活を覗いたからこそ見えてくる前向きさ このエントリーを含むはてなブックマーク 

『サムサッカー』、『人生はビギナーズ』のマイク・ミルズが“うつ”を患った日本人を撮影したドキュメンタリー映画。私自身、数年前にうつ病になり、現在も薬を飲んでいるので気になって観た。

原題は「Does Your Soul Have A Cold? (心の風邪を引いていませんか?)」という製薬会社によるうつ病啓発キャンペーンのキャッチコピー。このキャンペーンを否定的に捉え、抗うつ剤を服用する人たちを撮影し、問題提起するドキュメンタリーを想定するかもしれないが、これはそういった強烈なドキュメンタリーではない。被写体5名のありのままの生活を描くという点で、あまり監督の意見は反映されていない。むしろ同じ抗うつ剤服用者の5名でも、それぞれ違った生活習慣があり、各々の方法で“よくなる方法”を模索している。自分の生活リズムを毎日記録したり、毎朝嫌いなお酢を飲んで精神を鍛えたり、気分を上げるためにハイヒールを履いたり…。こういった個人の“よくなろうとする気持ち”は周りからはあまり見ることができないので、うつ病に対してステレオタイプなイメージを持っている人には是非観てもらいたいと思う。

また、監督のメッセージという形ではなく、被写体の彼ら/彼女らから自発的に「抗うつ剤に対して受動的にならない姿勢」が発せられているのも見所。被写体の一人の女性は「これはもう“うつ”との闘いというか、抗うつ剤との闘い」と言い、別の男性は「自分が主治医のつもりでやっている」と言う。製薬会社のキャンペーンでうつ病が広がり、結果として製薬会社の利益になっていることは事実かもしれないが、患者自身でそこに問題意識を持つ人もいるのだ。撮影当時(2007年)から6年経った今年現在、上述の2名はうつを克服したり、減薬したりしているという。他の被写体となった人も、この撮影当時よりもよくなっているといいな、と思わずにはいられない。

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hark

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