2013-09-20

『マイク・ミルズのうつの話』クロスレビュー:5人の視線で体験する閉塞感 このエントリーを含むはてなブックマーク 

観終わったあとに感じたのはスッキリした爽快な気分だった。映画のテーマは深刻なものなのだが、なぜか爽快感が漂うのは、マイク・ミルズ監督の優しい絵作りと5人の優しさと植物の芽生えのような前向きな感情からだろう。
5人は、それぞれが異なった痛みと一緒に暮らしている。これは例えるなら出口の見えない無人島暮らしのようなものかもしれない。カレンダーの感覚が分らなくなるのか、ある者は日々の記録をつけることや寄り合いに顔をだすことを習慣付ける。またある者は犬とたわむれる。ある者は露出や身体を縛られることで強い刺激を受け活力を取り戻そうとする。ある者は植物を育み、ある者は身体を矯正しようと柔軟体操や毎朝苦手なお酢を飲む事を心がけたりする。これらからは静かな前進のメッセージが漂う。
最初は、生々しいドキュメントならでの映像で戸惑ったが徐々に暮らしぶりから滲み出てくる人格が伝わってきて、合いの手のように入るマイク・ミルズ監督の質問によって、さらに親近感が増し、愛おしさすら感じるようになった。
そもそもうつ病はなぜ広まったのか?ということを映画では少し突っ込んだ箇所がある(日本ではある時期を境に広まっている。製薬会社のプロモーションの時期と関係が濃いようだ)。製薬会社や医師の功罪は、さまざまな側面があるものだとしても、コマーシャルやネットへの出資といった販促活動を考慮すれば、叩いたら埃が出てくるものだと思わずにいられない。
直接的な描写はないが、日本の都心部ならではの閉塞的な住居環境、緑の少ない住宅地、他者との交わりがすくない無縁社会。そういった現代の弊害がこの病いには悪い面を与えていると感覚的に思った。

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cyaro

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