ドキュメンタリー映画というのは退屈なものが多いと思っており、実際、今まで眠ってしまったことが何度もある私...でも、この映画は時間も一時間程度と短くコンパクトにまとまっていて、非常に観やすかったです。さらっと観られて、ファンでなくとも楽しめると思います。
むしろ、ファンじゃない方向けに作られているんでしょうね。ドキュメンタリーと言うより、経歴をダイジェストにしてみました！という感じ。正直、内容としては長年のファンには少し物足りないです。でも、あの映画版『黒蜥蜴』や『黒薔薇の館』の映像を一部とはいえ映画館で観られるだけで、足を運ぶ価値は絶対にあり！です。
外国の監督が撮る日本というのは独特の視点があって、いつも「これが日本？」と新鮮に思うものですが、さすが、どこにいても、どこから切っても美輪明宏様！圧倒的存在感のせいで、そういう新鮮さはなかったですね。いいことなのか残念なことなのか...
短い時間の中で華麗な経歴を網羅してしまったせいで、全体的に薄味になってしまったのが少し残念でした。黒蜥蜴という切り口から、もっと濃く深く掘り下げていってくれると、長年のファンも満足するような、もっと見応えがある映画になったかと。
美輪明宏さんに対して「オーラの泉の人でしょ」とか「ヨイトマケの人でしょ」とか、ざっくりした印象しか持っていない人に対して、違うよ！これが美輪明宏さんだよ！！と説明するために見せるには、とてもわかりやすい映画だと思います。『美輪明宏入門』として、ぜひ図書館等に置いていただきたい映画。
『黒蜥蜴』はもちろん、『双頭の鷲』や『椿姫』『毛皮のマリー』...数々の舞台の名シーンも網羅されていますし、それを観たことのある人であれば、あの感動を思い出して泣けること請け合いです。（私は舞台のシーンごとに泣いてました）
観た直後は「物足りなかったなー」と思ったのに、その数日後には「また観たいなー」と思える不思議な映画です。
