2013-05-21

『タリウム少女の毒殺日記』クロスレビュー:現実と非現実の錬金術 このエントリーを含むはてなブックマーク 

倉持由香さんと言えば。
グラビアアイドルとしての活動に昨年から力を入れているタレントさん。ツイッター、ブログ、そしてニコニコ生放送などで活躍していて、ネット住民を中心に人気のある女の子。「90センチのもっちりヒップです!」と元気な声でアピールする現役女子大生アイドルです。その倉持由香「もっちー」が映画に初主演。しかも実際にあった事件をモチーフにした作品で「母親にタリウムを飲ませて毒殺未遂事件を起こした女の子」の役を演じるという。これはさぞかし、現実の彼女とはかけ離れた演技をしているんだろうなと想像していました。

ところが。
作品を見て驚きました。自室でパソコンに向かいインターネット。ゲームセンターで遊ぶ。カメラで写真や動画を撮る。そして、チャットレディーや「踊ってみた」動画のアップロードまで。作品の中のもっちーは現実の彼女がやりそうなことをたくさんやっていたんです。見る前に予想していたような違和感がほとんどない。
と、思わせているところへ突然・・・。生き物を殺して組織を透明にする実験をしたり。学校の先生に「チップを体内に埋め込んだ場合、人体への医学的影響はどのくらいありますか?」とドライな眼をして質問したり。母親に毒を飲ませたり。現実のもっちーでは決してやらないであろうシーンが飛び込んで来るんです。

これは土屋監督の術中にまんまとはめられたな。
と思いました。
あの明るいもっちーからは想像もできない演技を・・・と思わせておいて普段から彼女がやりそうなシーンを入れて来る。見る方は安心する。でもいきなり現実離れしたシーンが飛び込んで来る。これで現実と非現実が混在した感覚に襲われてしまう。監督の魔術です。
私の場合は、ふだんから馴染みのある「もっちー」が「現実」を感じさせる部分でしたが、見る人によっては劇中の他の登場人物にこの「現実」を感じるかも知れません。生物学者、美容整形外科医、身体改造アーティスト。「現実」へのとっかかりは様々なかたちで用意されています。監督はとにかく用意周到なんです。

「現実」と「非現実」が混在しているように感じさせるもうひとつの要因は、この映画の構造にあるのかも知れません。この映画は、ずっとストーリーを追って見るような作品ではありません。様々なシーンが押し寄せて来る中から、自分が気に入った部分を深く感じれば良い作品。スマホでネットを検索していて、自分に必要な情報を見つけたらスクロールを止めるように。あたかも、仮想空間を散策しているような感覚で見られます。
また、はっきりとピリオドを打たずに終劇しているのも、ネットを連想させます。きっと、何回か作品を見直し、その度に新たな発見をしてください、という監督のメッセージなのでしょう。試写会、劇場、DVD。見るタイミングと状況で新たな発見がありそうです。それほど、情報量が多いんです。

それにしても、なんて楽しい作品なんだろう。どこから見ても良いし、どう解釈しても良い。見る人の解釈によって無限の広がりを感じさせる映画です。

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emanons

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