2012-11-27

『サイド・バイ・サイド:フィルムからデジタルシネマへ』クロスレビュー:映画好き必見!共に議論したくなるドキュメンタリー このエントリーを含むはてなブックマーク 

私は映画を観るのが大好きな一般人です。専門家ではありません。
私がこのドキュメンタリーを知ったきっかけは、キアヌのファンだからと言う単純なもの。
昨年から彼が何かやっているのは気付いていましたが、それがこの「サイド・バイ・サイド」だったのです。

因みに、2010年9月の誕生日に、街角でカップケーキにロウソク1本を立てて祝う「ボッチの誕生日」パパラッチ写真には、クリス・ケニーリー監督が写り込んでいました。
打ち合わせ時の休憩時間だった様子。
作品中、キアヌの髪の長さが変化しますが、髪が長めは2010年の末。
ロン毛髭面は2011年の47RONIN撮影中、ショートは2011年の8月以降の撮影です。

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このドキュメンタリーは、製作者の意図として「映像体験への理解を深める助けになってくれればいい」(参照:キアヌ・リーブス インタビュー http://www.webdice.jp/dice/detail/3709/ )とあるように、フィルムとデジタルの違いや、デヴィッド・リンチ、ジェームス・キャメロン、マーティン・スコセッシ、ジョージ・ルーカス等、スター監督達へのインタビュー、撮影監督、編集者、カラリスト、カメラメーカー等へのインタビューによって、現在映画界が置かれている現状を、映画業界の人ばかりではなく、一般人にもわかるように説明してくれます。

問題点のみならず、映画がどうやって作られて行くかまでわかるような順番の構成になっています。
フィルム派デジタル派が交互に出て来て思わず「ムフフ」と笑ってしまったり、デヴィッド・リンチ監督の存在感に圧倒されたり、映画ファンの一般人が観ても面白いエンターテイメント性のあるドキュメンタリーです。

登場人物はスター監督ばかりでなく、映画に関わるあらゆる職種の人々が登場します。
字幕で説明されてはいますが、全部は目で追い切れません。
私を含め、一般人は「誰?このおっさん」状態になりかねないので、鑑賞前にぜひ一度オフィシャルページ http://www.uplink.co.jp/sidebyside/ をご覧になることをお勧めします。
関わった作品名がわかると、さらにこの作品が面白くなります。

答える側の意見は、日本人だったらここまで言わないのではないかと思う位、フィルムだ!デジタルだ!と過激に答える人や、両方わかった上でフィルムが良い、デジタルが良いと答える穏健派が、偏ることなく平等に出てきます。
それによって、どちらにもメリット、デメリットがあることが浮き彫りにされて行きます。

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この作品を観る前は、もっとデジタル寄りになっていると思っていましたが、今まさに真っ只中の問題でした。
現時点では、まだ個人の好みが優先されていて、お互いのデメリットを突き合っている感があります。
「デジタル革命」と言われる位、何事も体制の中で新しいことを始めようとすると、最初はバッシング等いろいろと苦労があったようです。

デジタルカメラ自体も、まだまだ発展途上。
写真を撮るデジタルカメラでさえ、日々改良され、最新の物を買ってもすぐに画素数が増えたり、新しい機能を持った物が出て来ます。
映画用のカメラも同じこと。いつ新しいカメラにするのか。
新しく改良されたカメラが出るたびに使う事が出来る人は、ごく一部なのでしょうね。

家庭用ビデオカメラの普及により、だれでも簡単に映像が撮れるようになりました。
YouTubeやニコ動には映像が溢れています。
誰しもがショートフィルムの監督になれるのです。
また、手持ちビデオの映像を生かす監督さんもいます。
しかし、作中でデヴィッド・リンチ監督が「全員に紙と鉛筆を持たせたからといって、秀逸な物語がたくさん生まれるわけじゃない。今の映画の状況も同じだよ。」と言っていますが、全くその通り。
お金を出して観るに値する物を作るには、やはり才能が必要でしょう。

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フィルムのメリットとして、撮影時や編集時の緊張感、映像の質感等が挙げられていました。フィルム1本で10分しか撮影出来ないとは知らなかった!
撮る方も撮られる方も確かに緊張して集中しますね。
編集も鋏を入れるのですから、素人の私は考えただけでビビリます。
職人さんの気概のようなものを感じました。

物心が付いた頃から、親に連れて行かれて映画を観ていた私には、フィルムならではの思い出があります。
途中でフィルム交換があったり、突然画面が真っ白になり「只今、フィルムを繋いでいます。」と放送があった事も。
屋内のシーンなのに画面中に雪が降っていた事もありました。
「どんだけ昔の話なんだ!」と言われそうですが、場末の小さな映画館での話です。
考えてみると、これはフィルムの劣化の思い出ですね。

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デジタルはフィルムに比べて安価で、一度に長時間撮れたり、いろいろ試して沢山撮れたりとメリットがあります。
またそれを、ごみを沢山作るだけのデメリットと考える人もいます。
俳優さんにとっては、長時間、演技を続ける事はキツイ時もあるようです。
ロバート・ダウニー・Jrのエピソードは笑えます!

3Dに関して、キャメロン監督が熱く語っています。
私個人は少々否定的。
「アバター」は3Dを試すために、まず3Dを観て2D、さらに3Dを観直しました。
確かに3Dの方が奥行があり綺麗さが増すような気がしましたが、思っていた程の感動ではありません。
綺麗な背景を観ようと思うとぼやけています。
現在の3Dは英語圏向きなのではないでしょうか。日本で観た場合、「飛び出す字幕!」になってしまう。主人公より字幕が手前と言うのが気になります。

今のところ、人間の目に勝る3Dはないと思っています。

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将来的には明らかにデジタルでしょう。デジタルの可能性は大きい。
どんな要望にも応えて行く。フィルムの良さを持ったデジタルだって可能でしょう。
そして何よりも、次世代を担う人たちは、どっぷりとデジタル社会の中で育っているのですから。
世代交代が成された後に、その人たちがフィルムに手を伸ばすかどうか。

カメラメーカーが、もうフィルムカメラを作らないと言ったり、フィルムメーカーがフィルム事業から撤退したりしています。
お金の問題も大きいでしょう。高価な物は使われなくなるし、儲からない物は作らない。
フィルムにとっては前途多難。

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このドキュメンタリーでは、制作面だけでなく、上映に関しての問題にも触れています。
デジタルで上映するのかフィルムで上映するのかによって、映写機に合わせてわざわざ変換しなければなりません。
過渡期には避けられない問題です。
でも、次に映写機を買う場合、どちらか一つを選ぶとしたら、デジタルなのでは?
最近はシネコンが多くなって来て、観る方にとっては便利でありがたいのですが、設備の調えられない単館映画館や小さな映画館にとっては厳しい時代のようです。

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世界中のキアヌファンの友人の中には映画学校関係者が2人います。彼女たちは、今、最も影響力のある人たちの発言集として、次世代となる学生たちに見せたいと、学校として奔走しています。日本の映画を学ぶ人達にもぜひ見てもらいたい!

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さて、私のようなただの映画ファンにとって、この問題はどうなのか。
正直言って、映画が面白ければ、どちらの手法を取ろうと構わないし、見分けが付きません。そうは言っても、映画ファンとして、現役バリバリの実力者たちの発言は、非常に興味深いです。
このドキュメンタリーを観る前に、素人なりにこの問題をああなのか、こうなのかといろいろ考えていました。
そのことが、出演者たちの口からああだ、こうだと語られます。
ばらばらだったピースがスポンスポンとはまるように「やっぱり!」と納得出来ました。

映画は、撮るだけ、映すだけでは成立しないことがこのドキュメンタリーを見て、よくわかります。
どのような形で進化していくにせよ、各部門の協力、同時進行の進化が必要でしょう。
どこかだけが突出して進んでも、他がついて来なければ、足の引っ張り合いになってしまう。まだまだ形を変えていく可能性のある映画界。目が離せません。

観た人がそれぞれ考えたり、語り合いたくなるドキュメンタリーです。
私はそのせいで映画に関わる全般、作るだけではなく、上映、宣伝にまで興味を持ってしまいました。
「映像体験への理解を深める助けになってくれればいい」と言う製作者の意図にまんまと嵌められたようです。

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okka_nyan

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“Keanu Reevesファンです!”


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