2012-11-22

ハマス-イスラエル休戦協定発効とバス爆弾の謎 このエントリーを含むはてなブックマーク 

夜7時のチャンネル4ニュース冒頭で、ガザで取材中の記者が「たったいま停戦に入りました」と第一報を伝えたように、英国時間の晩の7時をもって停戦協定が発効された。1日中アルジャジーラ・イングリッシュをつけっぱなしにして仕事していたんだけど、晩になっても全然進展がなさそうなので近所に新聞を買いに出かけたところ、留守にしていた15分ぐらいのあいだに「GMT19時に停戦協定発効」のアナウンスがあった、らしい。なんか決定的瞬間を逃した気がする。

今日は初めて「つぶやき」というものを使ってみた。ツィッターじゃない。mixiのアカウントにくっついてる「つぶやき」欄マキシマム150字。けっこう面白かった。いまは忙しくてメンテナンスができそうにないので手を出してないんだけど、一段落したらツィッター導入しようかしら。フェイスブックもまだやってない、というか、フェイスブックはたぶんやらない。個人情報の収集が半端でないようなので抵抗がある。

mixiのつぶやきは何日かたつと消えちゃうみたいなので、今日の(一連の)初つぶやきを貼付けておく。

* * *

2012年11月21日 11:08
ガザ攻撃8日目。テルアビブの町中で運行中のバスが爆発した。2人の人物が車中に置き去り[*]にした包みが爆発したと報じられている。爆発があったのはテルアビブの町中で、イスラエル国防省の近く。死者はいない。他に、南テルアビブでも爆発物が見つかった。この「攻撃」がだれによるものかまだ不明。

[*]訂正。置き去りじゃなくて投げ込んだみたいだ。以下同。

2012年11月21日 15:38
テルアビブのバス爆破をハマスがコンファームした。爆発物の入った包みを置いていった[*]と見られる人物は捕まっていない。「過去10年テルアビブは静かだった。この爆破がイスラエル人に与える心理的影響は大きい」とイスラエル人ジャーナリストがテレビで言っていた。そりゃそうだ。本物の忘れ物でさえ恐怖の対象になる。

友人へのメール:今日、テルアビブの町中を運行中のバスの車内で爆発があり、さきほどハマスがリスポンシビリティをコンファームしました(日本語にしにくいです)。爆発したのは3キロぐらいの爆発物で、置いていった[*]人物をイスラエル警察が捜索中。けが人は出ましたが死者はいません。「過去10年テルアビブは静かだった。この爆発がイスラエル人に与える心理的影響は大きい」とイスラエルのジャーナリストがテレビで言ってました。

そりゃそうでしょう。これからはどんな包みを見ても、たとえ本物の忘れ物でも空っぽの箱でも爆発物に見えてしまうわけで、ガザへの攻撃を続ける限りその恐怖は消えませんから。北アイルランド紛争中のイギリスがそうでしたが、こういう心理的ダメージは経済的な損失も大きいです。

そのジャーナリストは、「4年前のガザ攻撃のときとは周囲はすっかり変わってしまった。これ以上の攻撃の激化はそうした国々の怒りを買い、地域一帯を巻き込むインティファーダに拡大する可能性がある」とも言っており、この爆発にはそれが現実化した場合を想像させる効果があったということだろうと思います。

この人は、ハマスのホームメードロケットに脅かされてシェルターに逃げ込むイスラエル市民の映像がテレビで流れるだけで、ハマスにとっては勝利も同然だとも語ってまして、レバノン在住のHさんが言われていたようなレバノンのハマス応援ムード、今回ハマスはよくやっているという応援ムードの背景にこういうものがあるのだろうと思いました。

バスに爆発物を仕掛けるなんて「鬼畜の仕業(2チャンネル風に)」と言っていいと思いますが、戦略的にはハマスの勝利と言えるかもしれません。これによって風向きが変わり、早期に停戦が実現することを望みます。悪い方に転がる可能性もあるので安易な判断はできませんが。<メールここまで>

2012年11月21日 18:21
新聞買いに行っているあいだに停戦成立のアナウンスがあったらしい。1日中アルジャジーラ聞きながら仕事してたのに、決定的瞬間を聞き逃しちゃったぜ。実際の発効にはまだ30分以上あるけど、ともかく地上戦は回避された。ハマスの作戦勝ち。仲介に入ったエジプトも男を立てた(笑)。ネタ二ヤフは選挙に勝てないだろう。

2012年11月21日 18:39
停戦の条件としてハマス側は、進行中の攻撃の停止だけでなくガザの封鎖を解けと要求していたので、そこまでハードルを上げると合意は遠いのではないかと思っていたんだけど、どうもそれも実現するみたいだ[*]。細かい条件はまだわからないものの、なんかすごい。アラブの春でほんとうに中東は変わったんだと、改めて感激。

[*]ガザの封鎖解除についてはこれからネゴシエーションだそうだ。まったく希望がないわけでもなさそう。

2012年11月21日 22:14
テルアビブのバス爆破をハマスがコンファームしたというのは間違いだったみたいだ。ハマスが賞賛したってことなので、つまりイスラエルにとってはもっと悪い国産の敵か、少なくともいままでは敵とは見なされていなかった種類の人間なのかも。ホームメードの敵が仕掛けたホームメードの爆弾だったってこと?

* * *

今回のガザ攻撃、ルーザーNO.1はファタハのアッバスだろう。

今回のガザ攻撃ではエジプト、チュニジア、トルコの首脳クラスや国連総長のバンキームンなどなど、政治界のセレブリティが続々空爆下のガザ入りして破壊現場を視察したり市民を激励したりとかしてたんだけど、結局アッバスは使者を送っただけで行かなかった。仮にもパレスチナ自治区の代表なわけだし、敵陣に乗り込むのが怖かったとしても恥ずかし過ぎ~。自分を唯一のパレスチナの窓口として扱ってくれるアメリカやイスラエルに「配慮」したか、停戦はまだ遠いと思っていたか。どっちにしろ、機を逃した。明日パレスチナ評議会選挙があれば、ファタハの支持者が雪崩を打ってハマスに投票するんじゃない?

ルーザーNO.2はネタニヤフ。

ハマスのカッサム・ロケット弾なんて最新鋭防衛設備アイアンドームで全部撃ち落としてやるわい、な予定だったんだろうけど、意外にもハマスのカッサムは飛距離を延ばしていた。イスラエルは「イラン製」だと主張しているが、テルアビブやジェルサレムまで飛んだロケットもカッサムだった可能性がある(今日のThe Independent紙によると)。ちなみに、カッサムの制作費は1発500ドル程度とも言われていて(ロングレンジはもっと高価かもしれないけど)、それを迎え撃つアイアンドームは1発6万ドル以上。ここにも非対称が。

ルーザーNO.3はオバマ。

過去8日間、イスラエルには防衛する権利があるってことしか言わなかった。ガザにも防衛する権利があると思うが、そこんとこは素通りだ。エジプトの1月25日革命のときにもやることなすこと後手後手だったけど、まだ「アラブの春」が消化できていないみたい。北アイルランドの例をみればわかるように、昨日のテロリストが明日もそうとは限らない。でも、かれは演説がうまいから機会を逃さずに中東に行き、(またカイロ大学とかで)いいスピーチすれば失点を取り戻せるかも。人びとは心から鼓舞される言葉を欲しており、オバマはそういう言葉を発することができる政治家の一人だ。残念ながら日本にはいない。

それにしても、今朝バスの中に爆発物を置き去りにした[*]のはだれだろう。自殺爆弾じゃないから英雄になりたかったわけではないし、勝利宣言がないところをみると組織でもない。どっかのだれかがガザに同情してネットで作り方みてホームメードしたのかなあ。ハマスのカッサムもそうだけど、たとえ破壊力は小さくてもどこで爆発するかわからない爆弾は高性能ミサイルより効果的なことがある。そういうものを「テラー(恐怖)」と言う。

キーワード:

パレスチナ / ガザ / ハマス / イスラエル


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藤澤みどり

ゲストブロガー

藤澤みどり

“英国在住の文化ウォッチャー、芸術とお酒と政治好き。ブログ「ロンドンSW19から」http://newsfromsw19.seesaa.net/”


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