2012-04-23

『こわれゆく女』クロスレビュー:感情の奔流と「私」 このエントリーを含むはてなブックマーク 

土木工事労働者ニック(ピーター・フォーク)と、その妻メイベル(ジーナ・ローランズ)。メイベルは、溢れ出る感情をとどめる術を知らない。人への愛であったり、からかいであったり、憎悪であったり。感情を受け容れる者がいないと、メイベルは暴走を始める。周囲の者は、それを狂気とみなす―――夫のニックを除いては。ニックも感情を時に爆発させ、しかし、どんな時でもメイベルを抱擁する。このことが確信に変わるラストシーンは、人と人との間で形成される、奇跡的なミクロコスモスをあまりにも無防備に提示してくれるものだ。

ジョン・カサヴェテスは、本作、『ハズバンズ』、『オープニング・ナイト』、『ラヴ・ストリームス』など多くの作品において、押しとどめようもない感情の奔流にもだえ苦しむ人々を描いた。彼は、これこそに人間の特質そのものを視ていたのではないか。奔流がスクリーンと網膜を通じて私たちの中に入ってくるとき、私たちは、きっとニックやメイベルを「私」だと思うに違いない。

息遣いと空気を感じさせるカメラワークも見事な映画である。

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Sightsong

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