2012-01-27

『タンタンと私』クロスレビュー:タンタンは作者エルジェの人生そのものだった このエントリーを含むはてなブックマーク 

この映画で、私は『タンタンの冒険』の作者エルジェに会うことができたように思います。

私がタンタンと出会ったのは、10代の頃、夏休みをイギリスのサマースクールで過ごす為に訪れた、ヘレフォードという町の本屋でした。
大聖堂へと続く細い石畳のチャーチストリートにあったその本屋の二階には、子供向けの絵本コーナーがありました。遠い国に来てとても心細かった私を、たくさんの本が、励ましてくれました。中でも、まだ英語を勉強し始めて三ヶ月半だった私にとって、『タンタンの冒険』は、素晴らしい絵とストーリーで、最も楽しむことが出来たのです。

何故、こんなにも世界中の子供の心を魅了するのか?
それは、この『タンタンの冒険』が、作者エルジェ自身の人生全てを注ぎ込んだ作品だからだ、と気付かされました。作者自身の葛藤や、それを克服し、人として成長していく過程を、キャラクターのタンタンや、後には、ハドック船長に自身を重ねて描いていた。子供向けに受けを狙って制作されたものではないのです。そこには中国人青年との本物の友情も描かれていました。

私が10代の時に小さな財布の中のポンド紙幣と相談しながら、一冊だけ日本に持ち帰ろうと、
数ある『タンタンの冒険』シリーズの中から、数日間考えてやっと購入したのが、『カスタフィオーレ夫人の宝石』" THE CASTAFIORE EMERALD "でした。
今回、映画を観たことで、この作品が一番の異色作であったことを知りました。
エルジェが私生活での悩みから解放されて、最も楽しい気持ちで描いたものだったそうです。
この作品だけタンタンは、冒険に出ませんが、明るいコミカルなストーリーになっています。
当時の私は、こんな事実を知る由もありませんが、この一冊を選んだ理由は、まさにその明るさと楽しさだったと覚えています。エルジェと心が通じたように感じました。

是非、この映画で、フランス人学生のインタビューに答えるエルジェの肉声に触れてください。
そして、彼に出会ってください。

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NaokoーK

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