2011-06-28

『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』クロスレビュー:バンクシーから突きつけられた皮肉なメッセージ このエントリーを含むはてなブックマーク 

あの覆面アーティスト、バンクシーがドキュメンタリー映画をつくったと聞いて、「バンクシーの正体がわかるのか!わくわく」と思ったのは私だけではないはず。しかし、この映画はそんな生易しいものではなかった。そんな淡泊なドキュメンタリーではない。この映画は、現代アートシーンへの皮肉たっぷりのメッセージが詰まった風刺映画だ。

「アート」と呼ばれる作品を鑑賞するとき、私たちはなにを基準するだろうか。評論家の解説、口コミ、競売でつけられた値段…。そういった前情報、先入観を持って鑑賞された作品の価値は、世間で普遍化されがちだ。しかし、それは本当の意味での「アート」なのだろうか。私たちはひとりひとり違った価値観、感受性、視点を持っているはず。しかし、現代で生きていく中でそれら個々人の価値基準は、世間一般で普遍化された価値基準に冒されてはいないだろうか。

『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』は、そんな現代のアートに向けられる人々の目に対して「お前の目は節穴か」という問いをぶつけてくる。ある意味、バンクシーの作品に詰まったメッセージを映像化したものであり、バンクシーの新作(グラフィティの延長)であるといってもいいかもしれない。

現代のグラフィティシーンを映像に収め、自身の活動について語るのだろう…と勝手な想像は見事に裏切られた。しかし、そんな裏切りを「面白い!」と思わせ、私たちに今一度アートシーンについて考える余地を残しているのが、この映画の最大の魅力であり、バンクシーというアナーキーなアーティストの魅力でもあるのだ。

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hark

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