2010-08-23

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病の末に働けずその人は

だれにも気づかれることなく息がとまった。

玄関もトイレもなにも共同の部屋 うっすら扉が開いたまま。

誰もがぎりぎりのこの生き場所では
何日も気にかける人はなかったというのか。

まくらの下にしまわれた五千円札 大事な人からもらったもの 。

そして つつましく住んだ下町の小さな部屋には
今日もさび色の西日がさす。

まだ日本がめざましく経済発展していたころ
田舎からでてきた電気工が、職場からそう遠くなく家賃の安いこの町に

住むのが都合よかっただけ。

下町には情緒と人情があるというとき

そのかげに人知れない「やむを得ず貧しい悲しみ」を

だれが知るだろう。

キーワード:

貧困 / / 孤独死 / 高齢者


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Kaoruko Michelin

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Kaoruko Michelin

“いろんなことを考えすぎて、1日短い。”


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