2010-08-02

民主主義の悪夢へようこそ このエントリーを含むはてなブックマーク 

『ようこそ、アムステルダム国立美術館へ』クロスレビュー

いろんな事情がくどくど語られるところは睡魔が襲うところだけれど、ドキュメンタリーにしてはかなり登場人物の個性がクローズアップされている。
館長に選ばれなかった1学芸員の超落胆のモノローグまで(漫画チックでもあり)ドラマになっていく。
カメラワークの秀逸さに注目されたい。

年代別に担当学芸員がいることでもアムステルダム国立美術館の規模の大きさが分かるし、アジア担当の思い入れたっぷり金剛力士像の開梱シーン、修復担当の絵画に対する愛情や鮮やかな刷毛さばきっぷり、美術館の裏側で生き生きと人が動いている事象に、演出とは思えない幸福感がにじみ出る。警備員にまである種の勘違いともいえる執着がみえたりしていて滑稽だ。

市民のための美術館という理想が市民と噛み合なかった?(美術館が理想とするアート好きの市民ばかりではないということ)館長とスペイン建築家がまとめたプランが一転二転して着工が延び延び。模型から理想としてきた部分がざっくり間引かれようとする。市民の勝ち。
挿入される工事現場での学芸員の台詞は直接工事に関係ないことばかり。作品の解説してるだけ!?そのシーンが何のためのプロセスか説明されなくても、キット学芸員の頭の中は四六時中担当の作品への愛着でいっぱいなんだろう。建築現場のヤレヤレ感が想像できる。誰も答えをもってないと言う訳か。

そんな人間描写がおもしろおかしく撮られる一方、梱包されたままの膨大な収蔵品が眠っている倉庫風景を淡々とカメラがパンする。
2004年に始まった改築工事が市民の反対運動にあって未だ工事中という。振り回されているのは建築家だけなのだろうか?振り回すことを前提に敢えて国外の建築家を起用したのだろうか?スペイン側には「民主主義の悪用」とさえつぶやかれている!?下請けはたまったもんじゃない。

日本でも国際アート展がいくつか開催されるようになり、公立ミュージアム建設ラッシュもあり、延期のてんやわんや劇も多分ね。。。おらが街のために有名建築家やアートディレクターを起用しようとも、かならずズレが生じる。市民は必ずしも「反対イスト」を張っているわけでもないだろうに。あぁ面白い。

いつか観光で、アムステルダム国立美術館を訪れ
この映画の登場人物に遭える日が待ち遠しい。。。

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