2010-07-06

【『ぼくのエリ 200歳の少女』クロスレビュー】美しく哀しいヴァンパイア映画。 このエントリーを含むはてなブックマーク 

   ストックホルム郊外の集合住宅。ブリーフ一枚の少年、窓に向かい呟く「豚の真似しろよ。鳴け」
   タクシーの運転手。車を止め眼鏡を外し、鼻歌を歌う。少年の部屋の窓の下にタクシーが止まる。助手席から少女が降りる。少年は、革のケースに入ったナイフを取り出す。タクシーから大きな荷物を運ぶ男。少年はナイフを仕舞い、ベッドのマットに下に隠す。中年男が外で立ち小便している。見上げると、一室の窓をポスターなどで中から塞いでいる男の姿。
   翌日、学校の授業。殺人の後放火し、火事を装った事件は、警察によって暴かれたが、どうしてだか分かる人?と聞かれ、昨夜の少年が手を挙げる「肺がきれいだから」「よくわかったね」「本で読みました」。少年は、オスカー12才(カーレ・ヘーデブラント)。
   授業が終わる。同級生のコンニ「おお、オスカー、何を見ている?俺のことか?生意気だ。賢い豚のくせに。意地悪じゃないぞ」気が弱くコンニの子分になっている二人を従えて去って行くコンニ・・・。
   夜、集合団地の中庭に出るオスカー。ナイフを木に突き立てながら、コンニに言われた言葉を繰り返す。気がつくと、ジャングルジムの上に同じ年頃の少女立っている。それが、エリ(リーナ・レアンデション)との出会いだった・・・。

   両親の別居により、母と暮らすオスカーは孤独だ。学校でもクラスメイトたちに執拗にいじめられている。
   隣室に越してきたエリに恋をする。しかし彼女は12才の姿のまま2000年生き延びてきたヴァンパイアだった。彼女は人の血のみしか受け付けないのだ。共に街に現れた中年男は、多分数十年エリを助けながら暮らしてきた。エリに生贄を捧げることに失敗し、最期に自ら首を差し出し絶命する。多分、オスカーを、自分の役割を継ぐ者と認めたからだろう。
   日照時間の短い北欧はの冬は、太陽光に当たることが死を意味するヴァンパイアには相応しい。静かに雪が降る景色の中、哀しいラブストーリーだ。

   処女の泉、ひとりぼっちの天使、サクリファイス、マイ・ライフ・イズ・ア・ドッグ、ソフィーの世界、リリア 4-ever。北欧映画の子供たちは、なぜこんなに哀しくて、大人に刺さる眼差しをしているのだろう。

    秘宝ファンだけでなく、普通の恋愛映画ファンにも見て欲しい。

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松本哲也

ゲストブロガー

松本哲也

“専門学校非常勤講師、映像・音楽企画、自宅居酒屋店主”