2010-03-18

カワイイ障害者を演じるのも疲れる!? このエントリーを含むはてなブックマーク 

 重度身体障害者の住田雅清は、介護の研修に来た女子短大生に「一発ヤラせて下さい」と書いたFAXを実名で送った。誰もがうすうす気付いていながら、うまく言葉にできなかった違和感がここにすくい取られている。障害者を決して排除しないのだが、中途半端に受け入れる社会があって、住田は健常者たちの何気ない冗談をも愚弄と受けとめて孤立感を深めていく。彼の42歳という年齢設定も重要だと思う。日本語タイトルの「おそいひと」は意味がわかりにくいが、英訳の「Late Bloomer」が「遅咲き」あるいは「高齢デビュー」というニュアンスであるのなら、この年齢になるまでずっと耐えてきた挙げ句の暴発なのだろう。

 「外見はグロテスクだけど中身はカワイイ障害者」を演じ続けることに疲れてしまったのか? それなりの生活は保障されながら、住田の酒浸りの日々は生き甲斐がありそうにも見えなかった。印象的なラストシーンで、血まみれのナイフを手にした住田と彼のバースデーパーティーを準備する無邪気な善人たちの間の断絶は深い。だが、今はきっと過渡期なのであり、お互いに理解し合える日も遠くないのではないか。勇敢にも現実を直視したこの映画を見て、一抹の希望を感じたことも確かである。

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yumeji

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