LOS ABRAZOS ROTOS
ショウゲート試写室にて。
アルモドバル監督は元々好きな監督なのだが、かつての気狂いじみたタッチの作品からすると、年々どんどんまともになっていく感じが最近ちょっと残念だった。
…が、その中でも今回の作品はもっとも好きな作品になるかもしれない。
それは、個人的な事情になるけど、私自身が映画を撮っていること、女優をやっていた時期もあり、その過程でやはり複雑な愛憎関係に巻き込まれたこと…など様々な要因が重合して、とても他人事や絵空事に思えなかったから…なのだろうか。たぶん、きっと。
だから、ヒロインのレナ(ペネロペ・クルス)の気持ちもひどく理解できるし、映画監督のマテオ/ハリー(ルイス・オマール)の気持ちもわかるのだ。全体的にとても集中力が高く、アルモドバルの映画人生がと究極の愛が迫り来る手ごたえの作品に感じられた。
ただ、それ以上に、アルモドバル作品でのペネロペの生活感あふれる存在感は、観る人を力強く引き込む説得力があるだろう。
女優を夢見る女には嫉妬深いパトロンがついていた…。女が生きるために男を利用することはどうしてもあるわけで…でも、どうしたって本当に好きな人とじゃないとむさぼり合うようには愛し合えないのだ。
「映画は完成させなければ たとえ手探りでも」
…まさにこの台詞に尽きるのだった。
('10 2/6 より公開)