2009-05-27

ジーンズ売ッテクダサイ このエントリーを含むはてなブックマーク 

私たち日本人のだ~い好きな
「雪の女王」や「チェブラーシカ」が作られたのも
冷戦のソビエト時代でしたが、
今回はいかにも「あちらの国」らしい
アヴァンギャルド~プロパガンダアニメーションを鑑賞しました。

「ソヴィエトのおもちゃ」は、
太ったブルジョアから税金をむしりとる
とりとめのないイメージの連鎖で、
切り絵を使ったコマ撮りの手法の「動く政治ポスター」。
京橋のフィルムセンターで以前に観た
「なまくら刀」(日本最古のアニメーション)のような
「歴史的価値」優先で観ていたのですが・・・
確かに動きもぎこちなくて技術的には稚拙なのだけれど、
不思議なもので、その粗さにだんだん目が慣れてくると、
最後登場人物が動かない人形に変身して
1本のモミの木(?)に集約されるところなんて、
もうすっかりひきこまれてしまいました。
ヴェルトフはキノキ(映画眼)により、
人間の知覚を超えた世界を示すのが使命と考え、
トリッキーな手法に積極的だったということですが、
私はまんまとハマってしまったわけです。

もともとアニメの静止画の隙間を埋めるのは
観る人の想像力であって、
なめらかでリアルな映像が必ずしも優れているわけじゃない!
と実感した次第。

その後も、時におどろおどろしく、時にノーテンキに、
資本主義をこきおろし、ナチスをブタ呼ばわりし、
「電化を進めよ!」「戦争国債を買うのだ!」
といった煽動が時系列に続くのですが・・・

「資本主義は敵だ!」といいながら、
「素敵だ」というちっちゃな声がしてきそうな
不思議な違和感がしていたのですが、
最後の「射撃場」(1979年)で、それが確信に変わりました。

私事ですが、ちょうどこの時期、ひと夏をソ連ですごしていました。
今でもはっきり覚えているのは、
当時私たちはフツーにはいている安物のジーンズを
彼らがとても欲しがっていたこと。
ブルージーンズ(ソヴィエトでは絶対に手に入らない肉厚のジーンズ!)
お揃いのヴェストにキャップ、キャメルのたばこを吸って
オープンカーにのった若者は「憧れの的」のはずなのに、
なぜか失業中で、射撃場の「生きてる的」となって
逃げ惑うわけです。
なんて屈折した!!・・・とあきれるより、
許されたプロパガンダの範囲を超えないところで
花開いた芸術性を評価すべきでしょうか・・・?

そういえば、チェブラーシカでも、
フレッシュなオレンジや、ワニ(ゲーナ)
ライオンなどが登場するのは、
明るい南のエキゾチックな国への憧れ・・・
ということを聞いたことがあります。

怒涛のような81分間。
Bプログラムもぜひ観てみたいです。

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kerakuten

ゲストブロガー

kerakuten

“最近になって、月に15本くらい映画をみるようになりました。原作本の感想とあわせて、ブログに書き込んでいます。 ”