2022-04-30

中西健二監督「大河への道」(試写:一ツ橋ホール)を観て。 このエントリーを含むはてなブックマーク 

<地図のない旅>
 20代の頃、真夏になると自転車で旅に出た。金も地図も無い。自転車も無い。自転車は勝手に駅前で拝借した。立川~川越~浦和~栃木~葉山~、泊めてくれる友人知人の家を目指して何処へでも走った。地図もないのに、よくたどりついたものだ。メモ帖に住所だけは記してあったので、なんとかなったのだ。泊めてもらって、飯を喰わせてもらって、宛ても無く出ていく。そのうち、このまま失踪してしまいたい願望が出てきた。人通りの少ない寂れた侘しいバス停などで野宿していると、誰も自分のことなど知らない、誰とも連絡が取れないことから、一種の解放感が出てきて、なんだか嬉しくなってくるのだ。
 「失踪」。なんだかロマンチックな言葉じゃないか。
 これは今だってそうだ。スマホを持たず、ラインもやらない俺は、どこか失踪して解放されたい欲望があるのだろう。失踪に地図なんかいらないのだ。

 日本地図を作った伊能忠敬の話。
 平均寿命が50才ぐらいの江戸時代に、伊能忠敬は50半ばから全国を歩き出し、74才迄生きている。やはり歩くのは健康に良いのか。4人の女性と結婚し、4人ともに先立たれている。女性をとっかえひっかえした方が健康法だったのか。

 チラシを見たら、三谷幸喜作品かと思った。中井貴一さん、企画・主演で大奮闘。

 『還暦になったら、俺は自転車で日本一周の旅に出る』と、いつだか呑み屋で唾を飛ばして語ってたっけ。もうすぐだよ。またどこかで自転車拝借してくるか。もちろん地図なんかいらないさ。

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大倉順憲

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