2020-09-22

作・演出 福島三郎 「銀色のライセンス」(中野テアトルBONBON)を観て。 このエントリーを含むはてなブックマーク 

9月19日(土)18時。高齢者の事故。昨年、池袋で2人の親子を殺した元通産省の役人飯塚幸三が逮捕もされず、世間からバッシングを受けているという事件は記憶に新しい。もちろん事故を起こした当人は、過去の肩書など関係なく厳正に処分されるべきだ。では、これからの高齢化社会、免許制度はどうすればいいのだ。返納か。再講習か。再試験なのか。そんな身に迫った問題を、わかりやすく、いいところを突いてくれた秀作だった。落語「死神」を導入というか、マクラにして、物語に入っていく。「死神」は、人の生死を勝手に左右して暴利を貪り、結果、死神に殺されてしまうという「罪と罰」。人の業だ。物語も出演者全員の二面性が描かれていたが、これも突き詰めると「罪と罰」だろう。中西良太さん演じる元鬼軍曹教官が、身分を隠して高齢者講習を受けにきて、現状の講習制度を遠山の金さんの如く正すのも、彼の過去に何か「罪」があったのではないか。そんな深読みまでさせた演劇だった。ここぞという場面で求心力と説得力満点の演技を魅せる良太さんに「待ってました!」と大向うを掛けたくなったが、今は拍手だけ。楽屋見舞も出来ないのもまた致し方ない。竹内郁子さんが出ているだけで何故か安心感を覚え、20年程前パルコ劇場で観た桐野夏生原作の「OUT」で、猟奇的殺人犯なのに人間関係を保とうとしてニコニコしている彼女の演技が恐ろしかったのを思い出した。やっぱり裏表あるのは、女だな。クワバラクワバラ。

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大倉順憲

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