2017-06-11

吉田孝行の映像作品『ぽんぽこマウンテン』は、映画祭、ヴィデオアート祭、展覧会など、世界15か国、18の国際フェスティバルに選出されています。 このエントリーを含むはてなブックマーク 

吉田孝行の映像作品『ぽんぽこマウンテン』は、映画祭、ヴィデオアート祭、展覧会など、世界15か国、18の国際フェスティバルに選出されています。写真は2016年11月にフィリピン・ミンダナオ島で開催されたサラミンダナオ・アジア映画祭に参加した時の映画祭ディナーの一コマ。フィリピンの映画研究者エドワード・カバニョ氏(中央)とシンガポールの映画批評家フィリップ・チア氏(右)とともに。

International Short Film Festival Detmold
(2017年6月30日〜7月2日、デトモルト、ドイツ)

CANCAN Film Competition at LemoArt Gallery
(2017年4月2日〜5月6日、ベルリン、ドイツ)

International Video Art Festival of Camagüey (FIVAC)
(2017年4月4日〜4月9日、カマグエイ、キューバ)

International Film Festival of Nepal (IFFO)
(2017年1月11日〜1月15日、ダーラン、ネパール)

Syracuse International Film & Media Festival
(2016年12月28日、シラクーザ、イタリア)

Festival Film Dokumenter (FFD) Yogyakarta
(2016年12月7日〜12月10日、ジョグジャカルタ、インドネシア)

Jogja NETPAC Asian Film Festival
(2016年11月28日〜12月3日、ジョグジャカルタ、インドネシア)

SalaMindanaw Asian Film Festival
(2016年11月7日~11月13日、ジェネラルサントス、フィリピン)

Japanese Serbian Film Festival
(2016年11月6日〜11月13日、ベオグラード&東京、セルビア&日本)

Three Little Wolves Film Festival
(2016年11月3日〜11月6日、リュブリャナ、スロベニア)

Video Art Exhibition "Larga Vida a la Nueva Carne (LVNC)"
(2016 年10 月26 日〜10 月29 日、ブエノスアイレス、アルゼンチン)

International Video Art Festival Now&After
(2016年10月22日〜11月29日、モスクワ、ロシア)

International Video Festival DigitalBigScreen
(2016年10月13日〜10月15日、トルボヴリェ、スロベニア)

Asia International Youth Short-Film Exhibition
(2016年10月9日〜10月13日、宿遷、中国)

Eye on Film - International Film Festival for Children and Youth
(2016年9月30日~10月4日、リュブリャナ他全10都市、スロベニア)

IVAHM on Tour 2016
(2016年9月16日〜9月18日、リウネ、ウクライナ)

Facade Video Festival
(2016年9月8日〜9月10日、プロヴディフ、ブルガリア)

New Media Arts Festival Madrid (IVAHM)
(2016年5月5日〜5月15日、マドリード、スペイン)

吉田孝行作品『ぽんぽこマウンテン』
(撮影・編集:吉田孝行/2016年/10分/HD/16:9/白黒)
「ぽんぽこマウンテン」とは、日本のとある公園に設置されている白い色のエア遊具のことである。雪山のようなトランポリンであり、その上で子ども達は、ぽんぽこ飛び跳ねて遊んでいる。本作は、曲線のあるユニークな風景の中で、無邪気に遊んでいる子ども達の姿を、動画と静止画の組み合わせによって表現したモノクロの映像作品である。作品の冒頭に引用される「子供心を失った者は、もはや芸術家とはいえない」という彫刻家コンスタンチン・ブランクーシの言葉に着想を得て制作された。

【吉田孝行プロフィール】
1972年北海道生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。映画美学校に通い、様々な映像作品の制作に携わる。山形国際ドキュメンタリー映画祭2011でヤマガタ映画批評ワークショップに参加。東京フィルメックス2014でアジアの映画人材育成事業「タレンツ・トーキョー」のコーディネーターを担当。日本で唯一のドキュメンタリー専門誌「neoneo」の編集に携わる。共著に『クリス・マルケル―遊動と闘争のシネアスト』『アメリカン・アヴァンガルド・ムーヴィ』など。最新作『ぽんぽこマウンテン』が、映画祭、ヴィデオアート祭、展覧会など、世界15か国、18の国際フェスティバルに選出されている。

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【関連記事1】http://www.cinematoday.jp/page/A0005386
【関連記事2】https://jp.sputniknews.com/opinion/201611042976112/

【推薦の言葉】
「ぽんぽこマウンテン」という遊具で戯れる小さな少年少女が描かれる作品の後半で、背後に樹々を配したロング・ショットの美しさといったら。しかし、一見単純と見える曲線の美を生み出しているのは、それまでのショットの的確な配列であり、とりわけ静止画の導入が、時間の推移のなかで無償の官能性を呼び込んでもいる。時間と無時間が葛藤し、映画の原理に思いを巡らせる、極めて野心的な小品だと感嘆した。———筒井武文(映画監督・東京藝術大学教授)

【推薦の言葉】
ドキュメンタリーマガジンneoneo の出身者から、新しい才能が登場した。ドキュメンタリーとビデオアートの境を易々と越境し、ラヴ・ディアスを思わせる端正な白黒ショットのなかに、鑑賞者を過去の記憶へといざなう瞑想的な作品だ。———金子遊(映像作家・批評家)

【推薦の言葉】
吉田孝行による『ぽんぽこマウンテン』で真に驚かされるのは、冒頭の長めの引きのショットに続いて挿入される、靴を映す幾つかの短いショット(静止画)である。子どもたちの歓声が背景に聞こえ、いかにも子どもの靴らしく、踵で踏まれて後部の形状が崩れたスニーカーが多い。長らくそこに放置されてきたかのように砂地に馴染む古ぼけた靴、丁寧に揃えられ、開口部に靴下がねじ込められた靴、無造作に脱ぎ捨てられ、辺りに散乱する何対かの靴……。大げさを承知で告白すると、それらは僕に《ヴァン・ゴッホのよく知られた靴の絵》を想起させた。あるいは、それを重要な発想源としたマルティン・ハイデガーの『芸術作品の根源』を……。ハイデガーはその絵画に道具の「真理」を見出す。「物」と「作品」のあいだに位置づけられるべき「道具」が「道具」たる由縁(道具存在=道具的なもの)は、何かに役立つこと、すなわち「有用性」に向けて製造された点にあると言っていいが、他方で道具の「真理」に行き着くためには剥き出しの「有用性」から解放されねばならない(有用性が消えるのではない。それでは道具ではなくなってしまう)。そこで「道具」の(「有用性」よりさらに)「本質的な存在」としてハイデガーがやや唐突に持ち出す「信頼性」なる謎めいた概念について、ほんの10分足らずの簡潔さを帯びた吉田作品に即して記述を試みると以下のようになるだろう。まず子どもらは何かから解放され、具体的には靴(有用性)から解放される。だが、そうした子どもらの無邪気さへの讃歌に終わらないがゆえに、本作は素晴らしい。子どもら(人間=有用性の要求)から解放された道具(靴)の喜びや安らぎとでも呼ぶべき稀有なもの、つまりは「信頼性」を、しかもいかにもさり気なく画面上に定着させることに吉田は成功するのだ。一時の遊戯を終えて下山すれば靴たちが自分を待ち受けるであろうことを子どもらは信頼し、逆に山のふもとに一時的に放置された靴たちもまた忘れ去られたわけではないと子どもらを信頼する。吉田孝行の「作品」は、ハイデガーにとってのゴッホの絵画のように、道具なるものの「真理」(道具存在)へと僕らを導き遭遇せしめるのだ。———北小路隆志(映画批評家・京都造形芸術大学教授)

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吉田孝行

ゲストブロガー

吉田孝行

“映像作家。これまで世界30か国以上の映画祭や展覧会で作品を発表している。近作に『タッチストーン』『エイジ・オブ・ブライト』『ある日のアルテ』『ある日のモエレ』など。共著に『アメリカン・アヴァンガルド・ムーヴィ』など。”


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